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               トピックス   平成19年度(’09年度)

   親潮が10年ぶり北に大きく後退 サケ不漁、サンマ好漁  07.12.26 産経ニュース(生活) 

  千島列島から日本の東海上を流れる寒流「親潮」の南下の度合いが平年より鈍く、約10年ぶりに北へ大きく後退していることが26日、気象庁の観測で分かった。東北沖などで海水温が高くなり、一部海域でサケの不漁、サンマの好漁など漁業に影響が出ている。
気象庁は、親潮を含む北太平洋の海流全体が弱まったのが原因と推測している。
  親潮は栄養塩を多く含み、魚類や海藻をはぐくむ。
千島列島から日本の東海上を南下した後、Uターンするように再び北上するコースを取る。
春には宮城県沖付近まで南下し、夏から秋にかけてゆっくり北に後退する。
  気象庁は、海水温の低い海域の広がりから親潮の南下状況を観測。
今年は7月までは平年通りだったが、8月から大きく北に後退し始めた。
11月は平年だと北海道・襟裳岬の東から東北北部沖近海まで南下するが、今年は千島列島の南周辺にとどまっている。
  親潮による海水温の低い海域面積は、平成9年12月以来、最小規模という。
今後は徐々に南下するが、1月下旬まで平年よりも南下の度合いは小さい見通し。

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  絶滅危惧種 「カワバタモロコ」 被害          07.12.22中日新聞・愛知版

  絶滅危惧(きぐ)種に指定されているコイ科のカワバタモロコが生息している津島市の農業用排水路で、県が生息個体を十分に保護しないまま、改修工事に着手していたことが分かった。
関係者が抗議し、今月中旬に工事が一時ストップ。だが重機で河床が掘り返されてしまったため、すでに生息できる環境ではないとして、現在は工事が再開されている。
  現地は、ヨシ原の間を排水路が流れ、カワバタモロコの繁殖に適した場所だった。
県は1990年度から改修工事を継続しているが、2004年にカワバタモロコの生息が確認されたため、一時的に工事を中断。専門家による環境保全検討会で保護策を話し合ってきた。
  今年2月、カワバタモロコの生息に適した護岸などにする計画が検討会で了承され、11月21日に再度着工した。
  ところが、県は着工前の生息個体保護を工事業者任せにしてしまったため保護できたのは特定外来種のみ。カワバタモロコは1匹も保護できないまま、土壌改良工事が始まったという。
  検討会委員は「せっかく保護策を検討してきたのに、専門家による個体保護が行われないまま着工してしまうとは」と憤る。
  県海部農林水産事務所排水対策課によると、県農業総合試験場に委託した生息モニタリング調査では、今年8月と9月にそれぞれ十数匹ずつ生息が確認されたが、10月には確認されなかった。
  同課の服部芳之課長は「10月になると、工事現場付近にはカワバタモロコはいないという認識だった。環境に対する認識が甘かった」 としている。

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       長江河口でエチゼンクラゲ大量発生 10年前から     07.12.17 朝日新聞

    越境汚染の危機は海からも迫る。「沖合いなのに、海水が生臭かった」。
今年6月、水産庁の調査船に乗った国立環境研究所の越川海主任研究員は、海面が褐色に変わったのに気がついた。上海から焼く350キロの東シナ海。長江の汚れがここまで及んでいるだ。
    そこに、北上する直径数10センチのエチゼンクラゲの群れを見つけた。
数ヵ月後。今年も日本に1メートルを超すクラゲの大群が押し寄せた。
盛漁期の海を荒らす厄介者の出現は02年から続く。どこから来るのか。
    中国沿岸の都市排水で海が汚れ、エサとなる微小動物が増加。取り合う魚は乱獲で減り、クラゲの繁殖に格好の条件が整う。これが日本で有力視されてきた見方だ。
    そんな中、韓国・済州島で先月開かれた日中韓3カ国の研究会で、中国人の専門家が国内でのクラゲ発生の詳細を始めて明らかにした。
「長江河口域の江蘇省で97年から大発生が起きている」「東北の遼寧省付近でも2センチの幼体が見つかった」。日本の研究者には驚きだった。
    もっともクラゲの生態や浮遊ルートには謎が多く、「中国起源説」を認めたわけではない。
「中国の経済発展と結びつける証拠は何一つない。一部は日本海に流れ込むかもしれないが、ごく少数に過ぎない」と、中国水産科学研究院の程家袈・主任研究員。
    中国は日本側が提案したDNA解析を用いる共同研究への参加も見送った。「加害者」にされかねない中国側は敏感だが、大量発生の謎を解くには中国沿岸での調査が欠かせない。
(小林 哲 記者)

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      体重200キロ! 漂える悪魔・ エチゼンクラゲ  07.12.17 asahi.com

  うす茶色の巨大なクラゲが、定置網の中でひしめく。
最大で直径2メートル、体重200キロにもなるエチゼンクラゲだ。
群れになって今年も日本海を北上、津軽海峡から三陸沖に回りこんでいる。
巨体の重みで漁網を破り、触手には毒もある。漁師たちは「海の悪魔」と忌み嫌う。
その生態は長くナゾにつつまれてきた。
解明に挑むのが広島大教授の上真一(うえ・しんいち)(57)だ。
実家は貧しく、小学生のころはアサリを掘って小遣いにした。地元の広島大にすすみ、プランクトンの研究者になった。
クラゲに本格的にとりくむきっかけは、漁師のひとことだった。
90年ごろ、広島県呉市でシラス漁師の谷本悟(たにもと・さとる)(60)と出会う。
「クラゲが増えて困っている。先生、なんとかして」
当時、瀬戸内海で大発生していたのは直径20センチほどのミズクラゲだ。漁網の中はクラゲだらけ。
上は谷本の話を聞くまで、漁師たちがそんなに困っているとは知らなかった。
「頭をガツンと殴られたような気がした」。学生とともに、1000人を超す漁師から被害を聞きとり、論文にまとめる。
エチゼンクラゲに目を向けるのは02年、日本海で漁業被害がニュースになったときだ。
このクラゲの名づけ親は東京帝大教授岸上鎌吉(きしのうえ・かまきち)。
大正時代、標本が福井でとれたのにちなんで「エチゼン」。
でも、ほんとうは中国近海からの流れ者だ。漁業被害は青森県だけで20億円をこえた年もある。
対策を立てるには、まず、相手の正体をしっかりつかまなければ。
上は人工繁殖にとりくむ。生まれたばかりの赤ちゃんは、たったの2ミリだった。
それが、わずか半年で体重100キロを超す。
この世界初の人工繁殖をたすけたのは奥泉和也(おくいずみ・かずや)(43)。
農業高校を出て山形県鶴岡市の加茂水族館の飼育係になり、30種近いクラゲの繁殖に成功する。
上が相談にいくと、ノウハウをすべて教えた。
「翌年、上先生から、赤ちゃんクラゲを20匹ほどプレゼントされた。
『うちで育った子どもです。ぜひ展示に使ってください』と」
   ◇ 05年7月。上は対馬の沖合に船を出した。ある朝、学生が船室のドアをたたく。
「大変です! 海がクラゲだらけです」。   朝日に輝く海面に、キャベツほどのエチゼンクラゲが無数に漂う。
上はふと、美しいなと思った。やがて恐怖がこみあげてくる。「この群れが本州に押し寄せたら……」 予感は的中した。
クラゲの群れは日本列島をとりかこみ、この年、被害はのべ10万件に達する。
もし日本沿岸で繁殖したら、大変なことになる。
   翌年、上は写真入りのポスター「お尋ね者 エチゼンクラゲ」を4000枚つくり、全国の漁協に配る。有明海の漁師がクラゲを送ってきた。
育ちぶりからみて、日本の沿岸で生まれた可能性があるという。
   ◇  エチゼンクラゲの大襲来は、かつて数十年に一度の珍事だった。それが近年、しきりに起きる。なぜだろう?
「中国で開発と汚染が急激に進んだことが関係している」と上。
富栄養化でクラゲのえさのプランクトンがふえ、ライバルの魚は乱獲でへった。
地球温暖化による海水温の上昇も一因ではないか。
中国の領海に入って調べたい。
上は、下関―中国・青島のフェリーに乗り、海面を観察する。
クラゲの群れをみつけると、水産総合研究センター日本海区水産研究所の飯泉仁(いいずみ・ひとし)(59)に知らせている。
飯泉はそうした情報をもとに、エチゼンクラゲの出現状況が一目でわかるホームページをつくった。
「漁業者が対策をとれるよう、事前に知らせたい」
人の営みは自然を変え、海のバランスをこわしてしまった。
上は思う。クラゲの大発生はその「しっぺ返し」にちがいない。
「悪者扱いされているが、クラゲたちは、海からの警告を伝えているだけ。
それをきちんと人間の言葉に翻訳するのが、私たち研究者の仕事なんです」
(このシリーズは山本智之が担当します。本文は敬称略)
        http://www.asahi.com/jinmyakuki/TKY200712170165.html

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       ウミグモ異常発生でアサリ被害拡大                      07.11.25
  少し時期が過ぎていますが、ウミグモ(貝宿りウミグモ)が各地沿岸で異常増殖し、アサリなどの二枚貝に破滅的な被害を与えているようです。
NPO・千葉自然学校:
        http://www.chiba-ns.net/blog/other_event/archives/2007/07/post_115.html 
木更津市牛込漁協:
        http://www1.odn.ne.jp/ushigome.gk/
        http://www1.odn.ne.jp/ushigome.gk/index/osirase/umigumo.htm

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    設楽ダム建設で天然記念物保護    07.11.17 東愛知新聞・藤田彰彦記者
       ネコギギの引越しに手応え
                   http://www.higashiaichi.co.jp/today_news/071117t/07111701.htm
  国交省が設楽町南部の豊川上流域に平成32年度完成を目指す設楽ダム計画で、生息域が懸念される国指定天然記念物「ネコギギ」の引っ越し準備が進んでいる。
  同省設楽ダム工事事務所(山内博所長)が、ネコギギの親魚を採捕して増殖させ、稚魚100匹を先月末に放流。
  稚魚は無事生息していることが分かり、一連の野外実験が成功した。
  これを受けて同所は、放流したネコギギの生態系を把握した上で、試験たん水が始まる前までに最適地へ移植させる方針だ。
  この野外実験は、ネコギギの生息に適するとみられる場所へ放流後、世代を繰り返すことができるか調べる狙い。
ダム建設で水没して形成するダム湖予定地(同町中央部)の川に、現在生息する個体が対象となる。
生息していない場所で実験を進めることにより、引っ越し先として適するかどうかの判断を、より確実にしていく。
 ひげがユーモラスな「ネコギギ」
   提供・設楽ダム工事事務所
   実験開始にあたっては今回、生息数が少ないことに配慮し、5〜6月に親ネコギギ25匹を生け捕りした。県水産試験場の協力で、7月に2つがいが産卵・ふ化し、約240匹の稚魚が育った。
うち100匹(体長3〜4センチ)を選んで先月31日、豊川の野外実験淵に放流。
   ネコギギは行動範囲が狭く夜行性であるため、今月5日夜に同場所で潜水調査した。
その結果、元気な稚魚が11匹見つかり、放流の成功を確かめたという。
   同事務所では今後、放流個体が定着して繁殖することを、継続確認していく。
ネコギギはまだ生態不明な点が多いため、飼育・繁殖の技術を確立できれば「種の保存にもつながるのでは」と同所担当者。「なるべく早く保全手法をつかみ、余裕を持って、何回かに分けて移植していきたい」と意気込みを語る。
   完成予定の同ダムは、総貯水量9800万トンで、堤高129メートル、流域面積約62平方キロ。早ければ来年3月ごろに付け替え道路の工事に取りかかる。
   ネコギギの保全については、同ダム建設事業に係わる環境影響評価書(今年6月公告・縦覧)で、動物3種・植物16種とともに「生態系を十分調査した上で適地へ引っ越しさせる」と明記されている。(藤田彰彦)
 同様記事:http://www.tonichi.net/news.php?mode=view&id=21294&categoryid=1(東海日日新聞)
    http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20071117/CK2007111702064931.html(中日新聞)

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       琵琶湖で新たな外来魚、「エンツイ」を捕獲       07.11.05(MSN・産経ニュース)
                                          「サイエンス・生物」より・・原文
  滋賀県水産試験場は5日、琵琶湖でこれまで確認されていなかった中国産の外来魚「エンツイ」を捕獲したと発表した。
   捕獲されたのは1匹で、同日朝、大津市真野沖で、ブルーギルなどの外来魚を捕獲するための網にかかった。
   同試験場によると、体長約26センチの幼魚で、雌雄は不明。エンツイは生息水温が10〜28度と幅広く、琵琶湖で越冬もできることから、繁殖する可能性もあると同試験場は警戒している。
水生昆虫や甲殻類が主食で、観賞魚として国内でも販売されており、体長1メートルを超える場合もあるという。
発見された中国産・エンツイ
(滋賀県水産試験場提供)
   同試験場では、飼育に困った人が捨てた可能性が高いとみている。
外来魚の無許可放流は県の規則で禁止されており、違反者は6月以下の懲役または10万円以下の罰金。
                  http://sankei.jp.msn.com/topics/culture/3681/clt3681-t.htm

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              吉野川をエイ泳ぐ                                   07.10.31 asahi.com より

   今年8月、吉野川で釣り人が釣ったアカエイ。胴だけで30センチもある=徳島市内で海の底で暮らしているはずのエイが、吉野川の河口から何キロも上流や、徳島市中心部の新町川や助任川などにもすみついている。
川面をひらひらと羽ばたくように泳ぎ、「こんなところにどうしているんだろう」と、釣り人たちを驚かせている。(記者:三浦宏)
   8月、吉野川の河口から5キロほど、鮎食川と合流するあたりで、釣り人の男性(49)は、ずしりとした当たりを感じた。手長エビをえさにスズキなどの大物を狙っていたが、上がってきたのは胴だけで30センチはあるアカエイ。
平たい体をバタバタさせて暴れ、長い尾をくねらせていた。
   この男性は以前、河口から約14キロの第十堰(ぜき)付近でもエイを見たことがあるという。
街中でも、両国橋近くの新町川沿いなどで、散歩中の人がよく見かけるそうだ。
   エイは、カニやエビ、貝などを食べる。穏やかな海を好み、海底の砂浜に浅く潜るようにしてすごすことから、吉野川が運んできた砂が広がる河口は、絶好の「住み家」で産卵場所にもなっていると思われる。
   また、河口では、淡水より比重が高い海水の層が、川の水の下に潜り込むように、上流に向かって広がる「塩水くさび」と呼ばれる現象が起きている。
その海水層は、河口が広いほど大きくなり、吉野川もかなり上流まで川底近くは海水がさかのぼっているとみられる。底で暮らすエイにとっては、川の上流でも海同様にすごせる環境が整っているようだ。
      ヒレの軟骨を干物にしたり、身を煮付けにしたりと、食用になるアカエイだが、尾には猛毒を持ったトゲがある。ノコギリ状の返しもあって、刺さると抜きにくく、釣った時は十分気をつけなければいけない。
  川に入る時も海と同様に、誤って踏みつけないように注意する必要があるという。

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   多摩川にコクチバスが定着?                     07.9.19  朝日新聞

  「ブラックバス」の一種で外来種のコクチバス(スモールマウスバス)が、首都圏を流れる多摩川で今年に入り相次ぎ捕獲された。卵からかえってまもない稚魚と繁殖能力を持つ親が見つかった。
違法に放流されたとみられ、定着の可能性もある。漁業関係者はアユなどの食害を心配している。
  川崎河川漁協が多摩川中流域で行っている調査で、確認されたのは約2センチの稚魚4匹と、約44センチの親魚。親魚はメスで、胃の中から14センチ前後のアユ数匹が確認できたという。
  多摩川では、近年は東京湾から川を上がる天然アユが増え、アユの遡上は推定で約100万匹を越す年もある。肉食のコクチバスは、低水温や川の流れに比較的強く、アユなどの在来生物の食害が懸念されている。
  コクチバスは北米原産で、大口バスとあわせて「ブラックバス」と呼ばれる。05年施行の外来生物法で放流や飼育が禁じられている。全国内水面漁連の04年の調査で、35都道府県から報告例があった。

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   ヤマメ夫婦からニジマス誕生               07.09.14 asahi.com より
                 東京海洋大准教授ら成功

   両親共にヤマメなのに生まれてくる稚魚はすべてニジマス――東京海洋大の吉崎悟朗・准教授らが、ニジマスの精子のもとになる細胞(精原細胞)を、ヤマメの稚魚に移植してニジマスの精子と卵を,それぞれ持ったオスとメスのヤマメをつくり、両者からニジマスを誕生させることに成功した。
   絶滅危惧(きぐ)種の魚の精原細胞を別の魚に移植して、危惧種を復活させたり、管理のしやすい小さな魚にマグロを産ませたりすることが期待できるという。
   吉崎さんらは、ニジマスのオスから精原細胞を取り出し、不妊処理をしたヤマメの稚魚の腹部に入れた。すると、本来は性成熟しないはずの稚魚が、ニジマスの精子と卵だけをそれぞれ持ったオスとメスのヤマメに成長。この両者をかけ合わせて生まれたのはすべて正常なニジマスだった。
   不妊処理したヤマメの稚魚は、染色体の数を2組から3組にした「3倍体」というもので、成長しても精子や卵はできないようになっている。 しかし、この稚魚にニジマスの精原細胞を入れると、この細胞が、精巣や卵巣のもとになる生殖腺に移動。
   稚魚がメスの場合はニジマス由来の卵が、稚魚がオスの場合は精子が、ヤマメの生殖腺内にできることがわかった。
   吉崎さんは「精原細胞が精子にも卵にもなりえるメカニズムはわからない」 としながらも、ヤマメの生殖腺が、移植したニジマスの精原細胞が精子や卵に育つ器として、役立ったとみている。
今回の技術を生かし、「5年後にはマグロを産むサバをつくりたい」としている。

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    底引き網漁解禁・・・痛みやすさ、魚で違い   07.09.13 朝日新聞
                                中部水産・神谷友成 「魚市場歳時記」より

  資源保護のために禁漁だった底引き網漁が全国一斉に解禁になった。
水産市場では、山陰地方からアカガレイ、ハタハタなどが入荷し、種類、量ともに増えて活気づいてきた。
  魚介類は鮮度を重視することが多いが、鮮度だけでは本当の価値は測れない。漁獲方法が決めてとなる等級も大きく物を言う。
  海中から一気に引き揚げる「釣りもの」は魚体を傷つけず、ストレスも与えないので一級品。しかし一回に数匹の漁獲で大量水揚げは望めず、そのぶん値段に反映する。一方「底引き網もの」は海中に沈めた袋状の網を引っ張って魚の群れを一網打尽にする漁法。海中を引き回すため、操業時間に比例して、魚は擦れ、水揚げ時に生きている確率も低くなる。しかしながら大量水揚げが期待できる漁法。当然一匹当たりのコストもお値打ちになる。釣り物より等級としては劣るが、一般の料理なら十二分に対応出来る。最も重要なのは「必要以上の等級を選ばなくて良い」こと。
  また同じ鮮度、グレードでも、魚種によっては鮮度以下のスピードが異なることを覚えておきたい。特売などでまとめ買いをした時には、
 使用する順番を考えるようにしよう。痛みやすい魚から使い、消費期限切れによる廃棄を減らそう。
 効率の良い食べ方も、美味しく食べる方法のひとつなのだ。

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        「食卓から魚が消える日」                         07.9.3朝日朝刊オピニオン欄

  水産総合研究センター理事・小松 正之氏   聞き手:杉本 裕明 記者
[要 旨]
  米国とカナダの研究チームが、このままだと2048年には海から魚がいなくなると警告。
国連食糧農業機関(FAO)でも「世界の海で38%の魚がピーク時の10分の1に減り、7%がすでに絶滅しているなど、資源の回復力が急速に衰えている。また、魚介類の4分の1が枯渇し、半分がこれ以上獲ると枯渇する危険がある」と言っている。
  日本は一人当たりの年間消費量は約65キロ、680万トンと世界一です。
しかし、乱獲のため沿岸漁獲など国内生産は減り、自給率は57%に下がっています。
最近では、世界的な健康ブームなどで米国が21キロ、EU15ヶ国でも28キロと魚需要が急増しています。これも牛のBSEなどの影響もあるかもしれません。
更に中国など急発展国が海の魚を食べ始めたので、人口の多さを考えると、影響は大きくなるでしょう。
  日本人のマグロ好きは有名ですが、バブル期後に大衆化して、この40年間に1.7倍の消費量に増えて、黒マグロ・南マグロの世界漁獲量6万トンの80%を日本人が食べています。
また、キハダ・メバチマグロもこの半世紀で3分の1にまで減少しています。
しかし、世界のほかの国も欲しがるので争奪戦が始まっています。
  日本の養殖魚の年間生産量は26万トンですが、その餌はおもに南米などから魚粉を輸入しています。でも安全でない抗酸化剤エトキシキンなどが含まれています。
日本人にお馴染みのサンマの資源量の増減サイクルは数十年ですが、科学者の多くは年間80万トンは獲っても大丈夫と言っていますが、水産庁は上限30万トンと言い、実捕獲量は20数万トンです。一時的大量捕獲が値崩れするのを回避するせいでしょうか。
そのくせ枯渇が心配なサバやマイワシを必要以上に獲ったりしています。
  戦後漁民は魚を獲る権利を得ました。魚は全部自分のもので、いくらで獲っても良いと思われていましたが、持続可能な社会を求めるようになった今では、魚は国民共有の財産です。国連海洋法条約でも、海の魚は人類共有の財産だと宣言し、日本も批准しています。
  欧州や米国では資源量の調査を基に法律で魚種ごと漁業者ごとに漁獲量を割り当て、資源管理努力をしています。
また消費者にも意識改革もため、エコラベル(産地表示と共に資源に影響が無いことを明示)などを導入しています。
ところが日本は、国がたった8種類の魚の上限漁獲量を決めてあるのみで、、漁業者は寸法の大小などお構いなしで、先を争って上限いっぱい獲り続けるいわゆるオリンピック方式です。
  先進国の先例を見習い、制度改革を進めると共に、消費者もどの魚をどう食べると豊かな生活につながるのか考えて欲しいものです。
               参考データ:世界漁獲高
 1980年;7,557万トン
      日本14.7%、ロシア12.7、中国7.6、米国5.1、チリ3.8、ペルー3.5、その他52.6
 2003年;1億4,629万トン
      中国38.0%、ペルー4.1、日本4.1、インドネシア4.0、インド4.0、米国4.0、
      その他41.8

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    「温暖化でやせる海」                    07.08.31朝日新聞(長野記者)
    三陸沖でプランクトンが減る。・・・熱帯や亜熱帯でも。
(要旨)
  北太平洋で異変が起きている。
海面付近の栄養塩が乏しくなり、各種プランクトンが減っているという。

  三陸沖は、寒流の親潮と暖流の黒潮がぶつかり合う場所で、リン酸塩や硝酸塩などの栄養塩が豊富で植物プランクトンが多く、それを食べる動物プランクトンや魚も多い、世界3大漁場のひとつ。
  水産総合研究センター東北区水産研究所のチームが、この3月に日本海洋学会で発表した内容によれば、59年〜99年の40年間に、海面近くのリン酸塩濃度が4割近く減少したという。
一方で、ほぼ同じ期間に、サンマやスケトウタラの餌になる3種類の動物プランクトンも30〜90%以上も減っていた。
  「栄養塩が乏しくなったせいで植物プランクトンが減り、更に、それを食べる動物プランクトンまで減ってしまったのでは」と、同所・田所研究リーダー。
  異変は三陸沖だけではない。「紀伊半島からインドネシア沖にかけ、植物プランクトンの光合成量が、過去30年間に20〜50%も減っている」(05年北海道大渡辺淳教授)。
アメリカ西海岸沖でも20世紀後半に動物プランクトンが20%も減った(カリフォルニア大)との報告がある。
  原因としては、地球温暖化説が有力。北太平洋では、冬になると海面近くの海水が冷えて、海底に沈んでゆくが、これに伴って深層の海水がかき混ぜられ、栄養塩が海面近くまで上がってくる。
だが、温暖化で海面近く気温が上がったり、高緯度地帯での降雨量が減ったりすると、海面近くの海水が軽くなる。その結果、「沈み込み」が減って「かき混ぜ」が不十分になり、深層の栄養塩が海面近くまで上がってこない・・・というサイクルになる。
  三陸沖の深層水の栄養塩増加は北海道区水産研究所のデータでも立証されている(小埜室長01年報告)。
  熱帯や亜熱帯でも、海面近くの水温が上がると、表面の軽い海水が、栄養豊かな深層水のわきあがりを妨げて、同じような現象になる。
  「海のかき混ぜが減って起こるプランクトンの減少は、これを食べて成長する魚にも影響があるだろう」(東北大・花輪海洋物理学教授)。

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   「06年度・水産白書」 より     07.08.25

  日本人の「魚離れ」と世界の「魚奪い合い」に危機感
     http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20070522k0000e020041000c.html
わが国の水産行政は漁港整備あたりに途方もない税金を使い続けています。
漁獲高に比較して過大な投資と思われる豪華な漁港は、47都道府県すべてにあり、予算規模は相変わらず国土交通省の空港建設予算と競り合っています。
<参考>
(1)・日本の漁港一覧
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%BC%81%E6%B8%AF%E
    4%B8%80%E8%A6%A7
(2)・主な漁港と漁獲高推移
    http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/7400.html

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          エチゼンクラゲに抗菌・保湿効果        07.06.02 朝日新聞朝刊(服部 尚記者)

[要旨]
  巨大なエチゼンクラゲをはじめ、クラゲ全般に「ムチン」という糖タンパク質が豊富に含まれることを、理化学研究所の丑田公規研究ユニットリーダーのチームが確かめた。
  様々な動物の粘液などに含まれるムチンは抗菌作用や保湿効果があり、医薬品や食品添加物などへの利用に期待できる。すでに複数の企業と事業化を検討している。
  エチゼンクラゲは傘の直径が約2メートルもあり、重さも100キロ以上あるという。日本海沿岸では毎年、数十万トンの規模で発生していると見られ、底引き網などの損傷被害が出ている。他のクラゲも大量発生して原発や火力発電所の取水口を詰まらせたりする。
  同チームはこんな厄介者の有効利用を目指し、エチゼンクラゲを含む8種類のクラゲに有効物質が含まれていないか探索した。その結果、調べたクラゲすべてのほぼ全身からムチンを見つけた。
  ムチンはオクラやサトイモなどのヌルヌル成分として知られる。細菌やウイルスを認識して、攻撃から守る作用や保湿、洗浄作用がある。医薬品や化粧品、食品添加物など数多くの目的に使えると期待され、一部は商品化されている。
  ムチンはブタやウシなどの口や鼻、胃腸などの粘液にも含まれ、現在はそれらから製造されているが、未知の感染症などの心配がある。クラゲのムチンはこのような問題は今のところ見つかっていない。重さ100キロのクラゲから数十グラムも採れる。採取コストを10分の1ほどに下げられれば、産業化が可能という。
  ムチンは人の胃袋でピロリ菌の活動を抑制する働きがあるという説もあるが、今回見つかったムチンは人の胃液にあるムチンの耕造に酷似していた。

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           西日本の魚なのに…青森でサワラが大漁    07.05.22 asahi.com

     西日本で春を告げる高級魚のサワラ(鰆)の水揚げがこの10年ほど、青森県で急増している。
暖かい海を好むサワラはかつて、ここではほとんどとれなかったが、昨年は水揚げ109トンを記録。
今年も漁港に銀色の魚体が輝き始めた。
      急増の原因として、専門家には地球温暖化の影響を疑う声もある。
青森県三沢市沖の定置網に、網に絡まった小ぶりのサワラが次々と姿を現した。
 21日、三沢市漁協所属の漁船・北栄丸は、4カ所の定置網を引き揚げ、約500キロのサワラを水揚げした。
船にたぐり寄せられたサワラには、体長1メートルの巨大なものも。
   青森県では、96年に3.3キロ取れたという記録がある程度なので、北栄丸を運営する組合の種市徳蔵組合長(75)は「50年間漁をしてきたが、4、5年前まで見たことがなかった」と目を丸くした。
サワラは南方系の魚で、西日本では高級魚で知られる。 三沢でも大型魚は1キロ2000円以上の高値で売れ、ヒラメに並ぶ高級魚だ。
   三沢など太平洋側には、日本海側のサワラが津軽海峡を経てきた可能性があるという。
気象庁によると、過去100年で、日本海の水温は1.6度上昇した。三沢市沖には津軽海峡を通じて、日本海の海水が流れ込む。
   漁獲高は年ごとに変動も大きいが、広島大の上真一教授(海洋生態学)は、「全国的にもっと豊富だった時も青森で水揚げがなかったサワラがとれているのは、地球温暖化の影響とも考えられる」と話す。 三沢市沖には近年、温暖化との関連が疑われるエチゼンクラゲも多く、漁業被害が起こっている。
種市組合長は「海は変わっていくが、サワラのようないい変化はしっかり生かしたい」と語った。

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      カワウを氷責め ドライアイスで孵化を阻止 山梨    07.05.19 asahi.com

   放流したアユなどを食い荒らすカワウの卵を、ドライアイスで冷やして、繁殖を抑える「手法」を山梨県水産技術センターと同工業技術センターが考案した。
効果が高く、安上がりなのが売り。近く特許も出願する。
   竿の先に取り付けた手鏡で位置を確認しながら、ぶら下げられたドライアイス入りの風船を巣の上に落とすというやりかた。
   この手法は、細かく砕いたドライアイス約300グラムを、風船に入れ、釣竿の先に取り付ける。
別の釣竿の先にテープでくくり付けた手鏡で、巣にある卵の場所を確認しながら、風船を真上に持っていく。風船を取り付けた竿にはモーターがあり、スイッチを入れると、針がついた金具の留め具が外れ、風船が割れる仕掛けだ。
   ドライアイスをかぶった卵は零下10度前後まで下がり、孵化(ふか)できなくなるという。
カワウは、巣を撤去しただけなら他の場所に移るが、この方法なら、親鳥は卵をかえそうと抱き続ける。
経費は、風船とドライアイスだけで巣一つあたり100円程度で済む。
   今年3月から甲府市南部を流れる笛吹川左岸で実験をした。
一帯には、約400羽のカワウがおり、約150の巣がある。うち約40個の巣にドライアイスを入れた。
   水産技術センターの坪井潤一研究員は「通常なら、約1カ月でヒナがかえるが、今のところ一羽もかえっていない」と話す。
   カワウによる食害は、山梨県内だけで05年度、放流したアユの3分の1程度が食べられたという試算がある。全国内水面漁業協同組合連合会の推計では05年、全国の川魚の被害額は約73億円に上る。
   水産技術、工業技術の両センターは、本物の卵と偽卵を入れ替える方法など、被害を減らす方策を研究してきた。今回のドライアイスを使った手法が現在のところ、最も確実で安上がりな方法だという。

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             多摩川・カワウの現状          07.05.16 朝日新聞朝刊(庄司 直樹記者)
[要旨]
  関東近郊10都県でつくる「関東カワウ広域協議会」では東京都府中市を流れる多摩川中流域で早朝から火薬銃を使ってカワウの一斉追い払いをやっている。
  カワウによる放流魚の食害が問題になってきたのは、この10年ほどのこと。
カワウは内陸の河川や湖沼に生息するペリカン目ウ科の鳥で、体長約80センチ、体重約2キロ。一日で500グラムもの魚を食べるといわれる。オイカワなどの小魚や、釣りなどのために放流するヤマメやアユを狙う。
  環境省によると、04年に全国41都道府県2,275ヶ所のねぐらが確認された。全国内水面魚業協同組合連合会の調べでは、06年の被害推計額は73億円にのぼる。
  昭和初期にはウグイをはじめ淡水魚が多く獲れたが、戦後、護岸工事の影響や生活廃水による汚れで、魚は急激に減った。その後、川は再びいくぶんきれいになってきたが、時期を重ねるように登場してきたのがカワウだ。
  多摩川漁協多摩支部長の加藤三蔵さんや府中支部長の白木隆英さんによれば、昨年11月に、学術調査のため捕獲されたカワウの腹から、5センチほどの小魚が50匹も出てきたのを見たとのこと。
川を覗いてみると、一抱えもある巨大鯉や、メダカほどの稚魚はいたが、小魚の姿は眼にしなかった。
  漁協府中と多摩の支部では例年アユの放流を大型連休明けにしてきた。しかし今年は、カワウの食害を考えて、6月1日の釣り解禁の直前にずらす考えとのこと。

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    地球からの警鐘・魚が消えた海(マグロの危機を検証)          07.05.04

   日経ナショナルジオグラフィック社のウエブサイト・マガジン07.4月号に、
[地球からの警鐘/(地球の悲鳴)]と題して、「魚が消えた海・・・マグロの危機を検証」特集が掲載されています。
             http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0704/feature01/index.shtml

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        矢作川の鮎・ダムのお助け放流(放水)で遡上急増      07.05.03 朝日新聞朝刊
           去年1年で71万匹ーーー>今年2日間で89万匹

  矢作川の天然アユの遡上を助ける「お助け放流(放水)」が4月27日から30日まで行われた。
豊田市の矢作ダムの放流(放水)量を例年より計75万トン増やし、下流の水かさを増やしてアユを上りやすくした。
  観測できた2日間の遡上数は89万匹。昨年1年分の71万匹を超えた。
この放流(放水)は豊田市・矢作川漁協が要望して実現した。昨年は6月に散発的に行ったが、今回は断続的にまとまった量を流した。同市の明治用水頭首工で同漁協がアユを調べたところ、4月29日は15万匹、30日は74万匹が遡上した。放流(放水)終了後の5月1日も146万匹が上ったという。
  豊田市・矢作川研究所は「データを詳しく分析しないと、放流(放水)と遡上数増加は直ちに結びつけられない」と慎重だが、矢作川漁協の新見幾男組合長は「放流(放水)終了後も影響が続いているのかもしれない。効果は大きい」と話している。
  放流(放水)した水は、利水団体の調整で決めた水位以上に中部電力が裁量でためていた水。
漁協の要請を受け、国土交通省豊橋河川事務所が中心になってダム、中部電力、農業団体などと調整して放流(放水)が決まったもの。                               注・()内は編者挿入

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          カワウ(川鵜)、狩猟対象に・・・環境省、漁業被害受け方針   07.03.24 朝日新聞夕刊

  最近川鵜の姿が異常に増え、市街地でのカラス同様に、大群で乱舞して、特にこの時季に鮎の放流を狙って食い荒らす姿を、我々釣り人は目の前にして、腹立たしい思いをしています。
  漁業者には壊滅的な打撃があるにもかかわらず、ただ追い払い自分のところからは出て行ってもらって、よそでやってくれと願うしかありませんでした。
  この漁業者の切実な願いに環境省がようやく重い腰を上げて、対策に乗り出したようです。
朝日新聞・須藤大輔記者のレポート(3月24日付夕刊記載)によると・・・<要約>
  カワウが放流したアユなどを食べ尽くす漁業被害が全国各地で深刻化し、その被害額は全国で70億円を越しているため、環境省はカワウを鳥獣保護法に基づく狩猟対象に指定し、ハンターに個体数を減らしてもらう(駆除する)方針を決めた。
  このカワウは60〜70年代には、河川の水質汚染などで、全国3千羽以下に激減、絶滅も心配されるほどだったが、80年代以降になって水質改善もあってか、分布域が10倍、生息数も推定6万羽以上に増えた。このため、放流魚などへの食害で03年・43億円が06年・73億円に拡大(全国内水面漁連)。
関係自治体ではロケット花火などによる追い払い程度の対策しかなく、全く実質的効果は無かった。
  漁業団体などの度重なる強い要請で、自治体が捕獲を認めた「有害捕獲」の数は04年には前年の倍以上の約2万3千羽だった。今回の決定で、「狩猟鳥獣」に指定されれば、狩猟可能な期間・地域で、ハンターは特別な許可無く捕獲・駆除出来る。アユの放流時期前に集中的に狩猟する事で効果が期待される。然し一方、自然保護団体などは「ハンターとしては狩猟対象の魅力がなく、あまり効果は期待できないのでは」と指摘する。
  「狩猟鳥獣・・イノシシ、マガモなど48種」は環境省令で指定されているが、今後公聴会や審議会を経て、5月にも省令改定しカワウを追加する。

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   魚市場にも暖冬異変?・・・コウナゴ激減、アジは大型に   07.03.24 朝日新聞夕刊

  暖冬の影響か、春の海の魚たちに異変が起きている。
春の到来を告げる魚として代表的なコウナゴが今年は漁獲量激減。
「イカナゴ」を当地では「コウナゴ」と呼んで、伊勢・三河湾が全国有数の漁場だ。例年であれば2月の終わりから3月半ば過ぎまで網を引く多くの舟の姿が見え、漁港も活気に溢れるが、「今年の漁期は3月半ば頃までの2週間余りで終わってしまった。いつもは揃っているサイズも今年はばらばら、量も例年より相当少ない」・「トリガイが大豊漁だったり、多くの魚介類で獲れるタイミングが大きくずれている」(中部水産・神谷友成氏)。
  全国各地でも、異変が次々と・・・大阪湾では豆アジが大きく育ち、15センチにも。「去年湾内で生れた稚魚が季節を勘違いして湾外に出なかったのか、途中で引き返してきたのか」と、神戸市の漁師。
大阪湾の水温は、1月中旬以降、ほぼ毎日平年を上回り、日によっては3度以上高かった。(大阪水産試験)

  関西ではイカナゴの佃煮「クギ煮」が春の食卓には欠かせないが、今年は漁獲量が昨年の10分の1に激減。サイズは例年より大きめとか。
漁獲量は天候や海の状態、生息数など様々な影響を受けるが、暖冬も原因のひとつと思う」。(明石浦漁協)。
  富山湾では、寒ブリは平年11月〜1月が最盛期だが、今年は昨年末まで不漁続きだったのが、年明けから急に獲れはじめ、漁期も2月末まで延びた。年間漁獲量が339トンだが、今年は1〜3月で325トンも獲れた。(富山県水産試験場)。
  高知では春の初ガツオの出足が遅く、漁獲量も少ないそうだ。。

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          ゼニタナゴ「里帰り」・・・姿消した霞ヶ浦産、琵琶湖に残る  07.03.12 朝日新聞夕刊

  嘗て、茨城県の霞ヶ浦で数多く生息していたゼニタナゴが姿を消した。琵琶湖(滋賀県)のほとりで、約20年前から飼育・繁殖されてきた霞ヶ浦産のゼニタナゴを「郷里」に帰す計画が始まった。
  ゼニタナゴは東北や関東などに生息する日本固有のコイ科の淡水魚。体長6〜7cmほど。
水質悪化や外来魚の影響で各地で激減。環境省のレッドリストで「近い将来に絶滅の危険性が高い」と位置づける「絶滅危惧1B類」に分類されている。
  代表的な生息地だった霞ヶ浦では、社団法人「霞ヶ浦市民協会」(茨城県土浦市)が05、06年に調査したが、1匹も見つからなかった。霞ヶ浦産が滋賀県で生きている・・・。同協会の萩原富治さんが、それを知ったのは2年前。滋賀県立琵琶湖博物館(草津市)が種の保存のため、85年に霞ヶ浦で獲れたゼニタナゴを繁殖させていた。
  「霞ヶ浦産を元の生態系に戻そう」と、萩原さんは昨年11月、同博物館から50匹を譲り受けた。まずは一部を天然の環境に近づけた人口の池に放し、観察。繁殖すれば、段階的に放流し様子を見るという。
                                                (小林 豪 記者)

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         ボラのメス化 韓国でも確認。環境ホルモン影響?      07.03.07 朝日新聞夕刊

      韓国沿岸でボラにメス化現象が起きていることが日韓共同研究グループの調査で分かった。
都市から海へ流入する排水の環境ホルモン物質が影響している恐れが高いという。
日本以外での報告は始めて。6月にフランスで開かれる魚類の生殖生理学に関する国際シンポジュウムで発表する。
   環境ホルモンは、生体内でホルモンに似た働きをする化学物質。ボラは生息範囲が広く、 各国共通の調査対象になると期待されている。
メス化したボラは、99〜01年、大阪湾や東京湾で見つかっている。
今回の報告で、アジアの都市沿岸部で広域的に発生している恐れが出てきた。
    調査したのは、長崎大と北海道大、韓国・済州大のグループ。03〜04年に韓国の5海域でボラを捕り、オスの精巣の異常を調べた。
その結果、釜山、統営、安山の3都市沿岸で捕った64匹のうち7匹に、オスの精巣内に卵細胞が出来る精巣卵が見つかった
      さらに、本来はメスの血液に多い特定のたんぱく質が、オスの血液から高い濃度で検出されるケースが、麗水など4都市の沿岸で確認された。
麗水沿岸で捕獲した個体の濃度は、正常値の上限の56倍に達した。
   研究グループは、 今後、都市化の進む中国の沿岸でも調査する方針だ
                                               (山本 智之 記者)

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          暖冬・ワカサギ食い悪し・・・・犬山入鹿池     07.02.11朝日新聞(小川智氏のレポート)

  2月3連休の初日の10日、愛知県犬山市の入鹿池では、ワカサギ釣りを楽しむ人たちのボートでにぎわった。
  「入鹿池貸しボート組合」の奥村一男組合長によると、今冬のワカサギは成育が悪く、平年より3センチほど小さく、平均4〜5センチ。暖冬の影響で水温が高いためエサの食いが悪く、釣果は1人平均50匹前後で例年の半分以下という。
  ワカサギ釣りは3月中旬ごろまで楽しめる。

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           差別的な魚名が変わる・・32種を改める (日本魚類学会)                  07.02.01
                                    2月1日付・朝日新聞(夕)中村浩彦記者(要旨)

     日本魚類学会では「メクラ」「オシ」「イザリ」「バカ」など9種の語を差別的として、このような名前の付いた魚の改名を決め、2月1日公表した。変更魚名は32種。
学会では水族館や博物館などに新名称への変更を呼びかけてゆく。
     生物には世界共通の学名とは別に、国内で使われる独自の名前(標準和名)が付いている。
今回の変更はこの標準和名が対象で、同学会の標準和名検討委員会で検討判断した。
改名は日本産の魚類約3900種の中の32種。
     差別的和名については、見聞きした人が不快に感じたり、精神的に傷ついたりする恐れがかねてから指摘されてきた。水族館では独自に別名に言い換えて展示している所もあったりして、混乱を招いていた。
     他に、日本昆虫学会でも同様の動きがあり、約4万種の日本の昆虫を網羅する「日本昆虫目録」を編集中で、そこには差別的和名を使わない方針だ。
            [名前が変わる主な魚]
       メクラウナギ       = ホソヌタウナギ
       オシザメ            = チヒロザメ
   バカジャコ          = リュウキュウキビナゴ(沖縄にしかいない)
   セムシイタチウオ = セダカイタチウオ
       イザリウオ          = カエルアンコウ(泳ぐ姿がカエルに似ている)
       ミツクチゲンゲ     = ウサゲンゲ
       アシナシゲンゲ   = ヤワラゲンゲ
       テナシゲンゲ      = チョウジャゲンゲ
       セッパリハギ      = セダカカワハギ

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   海の酸性化がサンゴに危機                  07.01.23 朝日新聞

  石炭・石油など化石燃料から出る二酸化炭素(CO)が地球温暖化だけでなく、海の「酸性化」も招き、サンゴを死滅させるなど生態系に大きな影響を与える恐れがあると、世界各国での研究が相次ぎ、注目を集めている。日本でも北海道大学と海洋研究開発機構のグループが、影響を評価するための研究を始めた。
  大気に放出されたCOの3分の1は海が吸収するとされる、そのため海水のアルカリ性が弱まり酸性化が起きる。現在の海水PHは8.1で、産業革命当時より0.1酸性化している。
  大気中のCOが1%/年の勢いで増えると21世紀末には7.8まで酸性化が進むと予測。酸性化が進むと、炭酸カルシュウムでできているプランクトンの殻やサンゴの骨格が溶け出す恐れがある。
  日本を含む国際共同チームは05年の報告で、50年頃にCO濃度が500ppmになるとすると、南極海の一部で炭酸カルシュームが溶け出し、21世紀末に780ppmになるとすると、南極海全体と北太平洋の一部に広がる恐れがあると警告している。
  (注)COが海水に吸収されると、水と反応して水素イオンが増えるため、弱アルカリ性の海水が中性(ph7)に近付き、アルカリ性が弱まる。これを酸性化という。増えた水素イオンは海水中の炭酸イオンと反応し、炭酸イオン濃度を下げる。炭酸イオン濃度が一定値より低くなると、炭酸カルシウムを主成分とするサンゴ礁などが溶け出す恐れがある。

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   越前クラゲ大発生のナゾを追う・・広島大学・上教授の研究    07.01.21

  この数年、毎年、大きなものは200kgを超え、日本海沿岸に大群で押し寄せ、漁業被害を起こしているエチゼンクラゲについて、その発生のナゾについて研究を重ねている広島大学・上 真一教授の活動について朝日新聞社・山本智之記者のインタビュー記事が1月21日・朝日新聞「ひと」欄に掲載されています。
  (要旨) 毎年太平洋に流れ込む群れを追って調査をしているが、この冬も岩手県沖で捕獲調査を行った。
それによると、発生海域は中国近海。03年に、世界初の人工繁殖に成功、大学での水槽実験では、若いクラゲは一日に15%も体重が増えることが分かった。
  05年には、対馬海峡から一日に3億〜5億匹ものクラゲが日本海に流入した事を掴んだ。「被害が目立つ割に、生態にはナゾが多い。詳しい発生場所の特定もこれから」。大発生は今までは数十年に一回程度だったが、02年以降はほぼ毎年大発生。海洋汚染や温暖化の影が見え隠れする。
  特に、魚の乱獲や海水の富栄養化で生態系のバランスが崩れた海域では、異常発生が世界共通現象になっている。
  「クラゲは何もいわない。でも、私達に海からの警告を伝えようとしている。人類が今の生活の仕方を改めないと、大変な事になる」と教授は結ぶ。

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         「郡上釣り」名人・恩田俊雄さん逝く     07.01.14

  岐阜県郡上地方に古くから伝わる伝統的な釣り法「郡上釣り」で名人と謳われ、その名を欲しい儘にした恩田俊雄さんが1月13日、老衰のため永眠した。
  恩田さんは岐阜県の郡上八幡で60年代の前半から、川魚を使った郷土料理の店を営みながら川釣師になり、郡上地方に古くから伝わる「郡上釣り」に独自の工夫をこらし、両手で竿を持つという独自の釣り法を確立し、名人と謳われるまでになった。以後長年にわたり、師の教えを請う釣り人は後を絶たず、晩年になって、釣りが出来なくなってからも、自宅の店を訪れる釣り人たちに、自分の確立した釣り秘伝を伝え続けた。
 一方、長良川河口堰設置の計画が持ち上がると、釣人の立場から魚の生態系保護を訴え、反対運動の先鋒として活動した。しかし、残念ながら昨年後半から体調卯を崩し、入院療養中だった。
  尚、1月26日の名古屋テレビ(11ch)で、生前の恩田さんが出演し「川は今日も生きているか・・・最後の郡上釣り名人恩田俊雄が伝えた川への遺言」と題した特別番組の生前を偲んでの再放送があります。

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