魚や釣りにまつわる俳句・和歌を集めました
魚を季語とした句集
* 内容はーーー>>こちらへ (井上まこと著・「季語になった魚たち」より)
* 内容はーーー>>こちらへ (井上まこと著 「季語になった魚たち」(中公文庫刊)より抜粋)
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川の魚・海の魚を詠んだ句 (西東 登著・「魚との語らい」より)
[鮒]
* 初鮒や 志賀山越ゆる 竹の杖 青々
* 初鮒の 荷に降る春の 小雪かな 芒人
* 岡釣りの 後姿や 秋の暮 其角
* たそがれの 渡し釣師が 二、三人
* 釣竿の 見え隠れする ヨシの中
[モロコ]
* 筏踏んで 覗けば浅き 諸子かな 虚子
* 山焼けば 小川に浮かぶ もろこかな 月斗
[ウグイ]
* 桜色 失せずに焼けし うぐいかな 袴山
* 蕗の葉に 尾鰭あまりぬ 花うぐい 秋桜子
[オイカワ]
* 水底に 一枚岩や 柳鮠 虚子
* 水門に 少年の日の 柳鮠 茅舎
* 柳鮠 さばしる水を かちわたる 風生
[鯉]
* 映りたる つつじに緋鯉 現れし 虚子
* 釣殿の 橋をめぐれる 緋鯉かな 梓月
[鯰]
* 腰の辺りに 浮く丸桶や 鯰掻 竹人
[鰻]
* 土用鰻 三百貫も 売る覚悟 葦笛
[鮎]
* 石垢に なほ食い入るや 淵の鮎 去来
* 山の色 釣り上げし鮎に 動くかな 石鼎
* 鮎おちて 焚火ゆかしき 宇治の里 蕪村
* さくら葉も ちらりちらりや 鮎さびる 一茶
* 藻のみどり きらめき上る 放ち鮎 昭花
[ヤマメ]
* 山女釣 熊笹葺いて 渓ごもり 青邨
* 石青し 雪代山女魚 影ながれ 秋桜子
[イワナ]
* 釣り上げし 岩魚の下の 前穂高 眉峰
* 炭取りと ならび老いゆく 岩魚取 楸邨
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[ハゼ]
* 鯊の潮 芥たたえて 満ちにけり 虚子
* 帰り帆の 映る淋しや 沙魚の汐 蛇笏
[キス]
* 投網に 竜頭つき上げ 鱚いたり 柳芽
* 鉤のみて 口を結べる 鱚子かな 白楢
[アジ]
* 鯵干すや 網代の村は 過ぎたれど 耿陽
[カレイ]
* 箸とれば 梅が香もして 蒸鰈 知十
[コチ]
* 鯒王の 砂ゆるがして 泳ぎけり 零余子
[カツオ]
* 目には青葉 山時鳥 初鰹 素堂
* 鎌倉を 生きて出でけん 初鰹 芭蕉
* 女房を 質に入れても 初かつお
[スズキ]
* 釣り上げし 鱸の巨口 玉はやく 蕪村
* 秋風や 巨口の鱸 生きてあり 虚子
[サヨリ]
* たえだえに 鱵つづける 波間かな 耿陽
[タイ]
* こまごまと 白き歯並や 桜鯛 茅舎
* 桜鯛 鳴門の潮の 艶もちて 山六人
* 寒鯛の 凍り箸に はさみけり 石鼎
[フグ]
* あら何ともなきや きのふは過ぎて ふぐと汁 芭蕉
* 河豚を煮て この時歳の 過ぎにけり 波郷
* ふぐ食わぬ 奴にはみせな 冨士の山 一茶
* あげつらふ 事の果てなし ふぐと汁 月斗
* ふぐ汁や 鯛もあるのに 無分別 芭蕉
[イカ]
* 烏賊船の 灯点々と 浪がくれ 凡水
* 俎板の 下手がやぶりぬ 烏賊の墨 月斗
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魚と釣りを詠んだ和歌 193首 (朝日歌壇より)
*銀砂降るごとく 海面をしぶかせて 細魚の大群 過ぎては戻る 舞鶴市・吉富 憲治 (15.09.21)
*スカートを はいて鰻を食べたいと 施設の廊下に 夢が貼られる 安西 洋子 (15.04.25)
*「今お前が 食べてるそれは 蛇だよ」と 言いし男が 今の夫なり 斉藤 清美 (15.04.25)
*夕食は ウナギに決めたと 妻が言う 内緒で昼間 食した我に 長谷川 哲夫 (15.04.25)
*あたたかき 鰻を食ひて 帰りくる 道玄坂に 月おし照れり 斉藤 茂吉 (15.04.25)
*ゆったりと 水車廻している川の 水草の間に 鮠は春待つ 長野市・関 龍夫(15.03.02)
*風評に 松川浦の 小女子の 届かずなりて 四度目の春 下野市・若島 安子(15.03.02)
*きさらぎの 石花海傾ぐ 船べりに 上りくるパラソル級のヤリイカ 中央市・前田 良一(15.03.02)
*河豚のひれ 戸板一面に 乾されいて ひれ酒美味き 冬はもうすぐ 下関市・乗安 勉(14.11.17)
*産卵に 戻れる鮭の 弱りしを 眼光鋭き 尾白鷲待つ 恵庭市・五十嵐 容子(14.11.17)
*知床の 海に張りたる 定置網 羆泳ぎて 鮭を喰わえる 網走市・安田 達郎 (14.11.17)
*ていねいに 化粧塩つけ 焼かれゐる 魚の目より 光るもの垂る 石川県・瀧上 裕幸(14.10.06)
*月明りを 照りかへしたる 大潮の 波にひきぬく 太刀魚の銀 西条市・村上 敏之(14.9.29)
*帆をたたみ 晩夏の海は 潮任せ 岬を回り 波静かなり 安芸高田市・安芸 深史(14.9.29)
*すてられし 河豚の子 海へ放たれて 振り向きもせず 真っ直ぐ潜る いわき市・馬呂 弘平 (14.9.29)
*橋の下に 逃げ込みてなほ 釣りながら 電話するなり 「行くぞ夕立」 東大和市・板坂 とういち (14.8.06)
*枝に似た エラを頭の 後に立て 深山の山椒魚 ワニのごと育つ 福島市・沢 正弘 (14.8.06)
*海荒れて 山背吹く日は 烏賊漁の 舟の音なし 夕べは凪ぎて 八戸市・山村 陽一 (14.07.06)
*消えゆきし 漁法のひとつ 静かなる 入り江に組まれし 鯔待ち櫓 石川県・滝上 弘幸 (14.06.30)
*少年の かの日釣りたる 鮎の身の 甘きにほひの 手のひらにあり 霧島市・久野 茂樹 (14.06.30)
*薄日差す 市の路上に 寒鮒は 笊に盛られて あぎといており 大館市・小林 鐐悦 (14.02.24)
*竿を折り 大物釣ったと 友人は 五十センチの 石鯛くれぬ 日南市・宮田 隆雄 (13.11.25)
*カワハギの 顔を笑ひて をりし子の 皮はぐときを 逃げ去りにけり 香川県・薮内 真由美 (13.11.10)
*新浜の 御猟場まえの ドブ池で フナ釣り爺さん 今日も鮒釣る 加東市・丸山 義隆 (13.10.07)
*鱗雲 浮くゆきあいの 明け空に 黒鯛と勝負の 竿しなひたり 西条市・村上 敏之 (13.09.23)
*魚にも 魚の命哀れ あわれ蛸 逃げてゆく 明石魚棚 大阪市・関満 恒子 (13.07.08)
*水底に 影すべらせて 柳鮠むれて さ走る蘆の 辺の春 西条市・斉藤 克礼 (13.5.13)
*のんびりと 釣り糸たらす スーさんが してやったりと 笑む天の川 田市・斉藤 哲哉 (13.05.13)
*産卵の 命の狂騒 終えたるか 鯉静もれる 岸辺葉桜 蓮田市・斉藤 哲哉 (13.05.06)
*寄るものも 少なきわれに 釣られくる へら鮒五尾を 愛でて放てり 浜松市・松井 恵 (13.04.22)
*鮒釣りの 釣り座の ひとつの空席に しばし静かに 白鷺の立つ 館林市・阿部 芳夫 (13.04.14)
*いかなごの 釘煮 毎年くれる友 山地に届く 潮の香の春 郡上市・上窪 うた子 (13.04.08)
*放射能物質 今も流さるる 海に 魚の避難所はなし 平塚市・三井 せつ子 (13.04.08)
*放射能の 検査のための漁をして 競りなき市場で 測定始まる 平塚市・三井 せつ子 (13.04.01)
*寒ブリの 不漁に喘ぐ 両津湾 島の友らは どんな魚を釣る 長岡市・佐藤 正 (13.04.01)
*サックザク 霜柱踏む この音は 鱧の骨切る 小気味良き音 岡山市・上野 房子 (13.03.04)
*狂乱の 高値飛び交う 河岸の競り 冷たき板に 鮪並びて 小牧市・落合 弘光 (13.03.04)
*船べりに 六杯連なり 上がり来る 肉厚美味なる 石花海のイカ 中央市・前田 良一 (13.03.04)
*サファイアの 指輪を埋めたような 眼で石首魚が見る包丁の下 横浜市・中山 節子 (13.01.28)
*思川に 鮭のぼるらし 川底に 産卵終えし 鮭眠りおり 下野市・石田 信二 (13.01.14)
*渦のなき 時を選びて 海峡に 木の葉のごとく 舟の出て釣る 高松市・菰淵 昭 (13.01.14)
*鮒釣りの 竿間隔に ひとりひとりになりたい ひとりの世界 館林市・阿部 芳夫 (13.01.07)
*爺の手は 五歳の竿に 添えられて 小春の空に セイゴ跳ねたり 高松市・谷川 静子 (12.12.24)
*凍てる夜に 釣りて掴みし 大鯵は 小鳥のごとく 温かりけり 熊野市・波戸 与七 (12.12.24)
*何故秋に なれば故郷が 恋しいか 鯖・鯵・河豚 秋刀魚・キビナゴ アメリカ・郷 隼人 (12.10.07)
*廃線の 高千穂鉄橋 そのままに 落鮎釣りの ひと日淋しき 小城市・福田 由親 (12.10.07)
*竹島の あたりを泳いだ かも知れぬ魚に 醤油とすだちを かけて喰う 神戸市・北野 中 (12.09.17)
*川のぼる 鯊と岸辺に 釣る人と 確かな均衡 ありて秋なり 浜松市・松井 恵 (12.09.17)
*気水湖の 鯊の白身の 透き通り 旨しうましと ほろ酔いにけり 浜松市・松井 恵 (12.09.24)
*釣りあげし 鯰はぎいと 鳴きにけり 憎めぬ顔の 上目使いに 国分寺市・越前 春生 (12.09.03)
*届きたる 飛騨の岩魚を つつしみて 食みたるのちは 骨酒としたり 岐阜市・米沢 武司 (12.08.06)
*原発の 温廃水に 太りいし 刈羽の海の メジナを思う 中央市・前田 良一 (12.07.23)
*大鮎を 食らいて 髭ゆらす 四万十川の 梅雨濁の潭 四万十市・島村 宣暢 (12.07.23)
*アユ・ウグヒ 阿武隈川に セシウムの 検出されて 瀬音さびしき 福島県・谷口 修作 (12.06.25)
*腸を抜き 輪切りにしたり 若鮎の 背ごしと言うは 刃の切れ味 長野県・沓掛 喜久男 (12.06.25)
*紀の国の 春は早しも 曳き売りは 青箭魚(さごし)を捌く 路地に入り来て 和歌山市・山口 雅史 (12.02.27)
*翡翠(かわせみ)の 三寸の魚捕らえたり 総身しごきて ついに嚥下す 埼玉県・酒井 忠正 (12.02.27)
*水ぬるみ ヨシノボリ出づ 懐かしさ 尻尾をやはり 左に曲げて 岐阜市・後藤 進 (12.02.20)
*寒鮒と あるいは 約束ありそうな 寒鮒釣りは ひたすらに待つ 館林市・阿部 芳夫 (12.02.20)
*木の箱を 逃げださむと する蛸の 頭に叱るがごとく 値札貼られぬ 市川市・大河内 卓之 (12.02.20)
*辛口の 地酒を 用意して 待つと 岩魚の 宿の 主のたより 鳥取県・表 いさお (12.02.06)
*深く深く 水底にゐて アンコウは 重さに耐えつつ 肝太らせり 東京都・野上 卓 (12.01.16)
*北向きに いずれの船も 碇打ち 釣りをしており 冬凪の瀬戸 高松市・菰淵 昭 (12.01.16)
*三陸沖の 海の寂しさ 土佐沖に 戻り鰹の 放射能調査 四万十市・島村 宣暢 (11.12.04)
*三十尋の 遠き底より 大鯵の あたり幽かに 竿に響けり 東京都・野上 卓 (11.12.04)
*水揚げの 秋刀魚網より 零れ落ち 銚子漁港に 活気漲る 東京都・長谷川 瞳 (11.11.12)
*浮子の灯を 仄と消し込む 太刀魚の 合わせのコツは 一呼吸置く 塩釜市・木本 康雄 (11.11.12)
*漁師では もう食えないと 釣趣味の 少人数乗せ 湾出ずる漁船 舞鶴市・吉冨 憲治 (11.11.12)
*漁止めの 浜は白魚 寄せる頃 漁火はるかに 夢に灯りぬ 塩釜市・鈴木 久雄 (11.05.23)
*小朱点 哀しきまでに 鮮らけき 天魚売らるる 季節となりぬ 舞鶴市・吉冨 憲治 (11.05.23)
*買い手なき 小女子身を打ち 身を反らす 漁港に直射 日光受けて 埼玉県・小林 淳子 (11.05.23)
*三陸の 明治の津波 男らは 底引き網で 屍体集めし 名古屋市・諏訪 兼住 (11.05.09)
*市街地に 打ち上げられし 延縄の 漁船の上を ウミネコが舞う 宮城県市・生野 義治 (11.05.09)
*大津波の 瓦礫に立てる 魚市場 その鉄骨に 新しき大漁旗 ひたちなか市・黒澤 進 (11.05.09)
*屋上に 打ち上げられて 傾きし 難破船にも 四月の光 山口県・宮田 ノブ子 (11.05.09)
*吊るされし 鮟鱇の口の 大きさよ 春は気配を 消して近づく 佐世保市・近藤 福代 (11.05.09)
*榛名湖の 氷上に釣る 公魚の 穴より出でて 宙に光れり 前橋市・萩原 華月 (11.02.28
*養殖の 魚に餌を 撒く人のいて 沖は夕焼け 影絵のごとし 富士吉田市・菅沼 勝由 (11.02.
*小魚らは 静かに群れて 動かざる 春近き日の 明石漁港に 東京都・野上 卓 (11.02
*鮟鱇の 腹白々と 裏がえる 佐渡の両津の 冬の競り市 東金市・山本 寒苦 (11.02
*雪舞ひのなか 訪れし 友の手に 今朝上がりたる 来島の鯛 松山市・宇和上 正 (11.02
*榛名湖の 氷上に釣る 公魚の 穴より出でて 宙に光れり 前橋市・萩原 華月 (11.02.28
*新しき 出刃を用いて 鯵ひらき テキスト見つつ たたきに仕上ぐ 高崎市・友松 稔 (10.09.27)
*赤銅色の 男らの荒き 息消えし 秋刀魚を嘆く 女川港 石巻市・須藤 鉄郎 (10.09.27)
*鯔跳んで 凪の運河に 水輪生る 音賑やかに 日なが競えり 高石市・木本 康雄 (10.09.27)
*沸き立ちて ワカシ釣れるも 江ノ島の 沖より秋は 始まりにけり 東京都・野上 卓 (10.08.023)
*走るのが おそい私は 泳ぐのが 苦手な魚と 話してみたい 富山市・松田 わこ (10.08.016)
*針先の ごと頼りなき 雑魚たちが 人影させば はや藻に隠る 境市・丸野 幸子 (10.08.08)
*孵(かえ)せざる 鮞(はらご)抱きて 鮒鮨になりし 似五郎は 目をむきており 神価市・寺崎 尚(10.08.08)
*西日受け 雑魚ばしゃばしゃと 産卵す 弁天島の 夏の夕暮れ 秩父市・浅賀 信太郎(10.07.05)
*一湾が そっくり漁場で あった頃 故郷の鮫は 烏賊くさかった 横浜市・田口 千陸(10.07.05)
*釣り上げて 弓手につかむ 尺鱚の 鈎を外せば 啼き声たてし 高石市・木本 康雄(10.06.28)
*竿鳴らす 青葉風吹く 土佐沖は 鰹の魚群(なぶら) しぶき湧き立つ 四万十市・島村 宣暢(10.05.24)
*石狩の 河口に数多 棲みたる 左平目に 似る川鰈 札幌市・境 隆(10.05.03)
*夜釣りせむと 渚に佇てば 潮騒に たわむれ輝よふ 夜光虫の群れ 熊野市・波戸 与七(10.04.19)
*昼網の 鯛の鱗の 輝きて 明石魚棚 春はきにけり 東京都・野上 卓(10.04.11)
*釣り上げし 岩魚を雪の うえに置く 春の光は 警告に満ちつ 鳥取県・表 いさお(10.04.11)
*沼べりの 日だまりにいて だんまりの 寒鮒釣りは 釣れても寡黙 館林市・阿部 芳美(10.02.15)
*三億の 子を産み捨てて 沸き立たぬ マンボウという 母性悲しも 東京都・野上 卓(09.11.23)
*鬼百合の 咲きたる岸の 浅き瀬に 箱眼鏡で捕る 鮎シャクリ漁 四万十市・島村 宣暢(09.10.5)
*其処のみに 雨頻るごと しぶかせて 細魚(さより)の群れの 海面を移る 舞鶴市・吉冨 憲治(09.09.21)
*孤独なる 老いにも似たり 廃船は 浜に傾き 腹を晒せり 八王子市・斉賀 勇(09.09.21)
*明日あたり 鯛の貌でも 見に行くか 餌の生きえび 跳ねているうち 西海市・原田 覚(09.08.05)
*出刃で裂く 白身胴巾 八寸の 大鰻食う 持ち来し朋と 四万十市・島村 宣暢(09.08.24)
*ナマズ釣る 少年なりし 裸ん坊 原爆の後 着物着せらる 佐賀県・白武 留康(09.08.17)
*立ち並ぶ 高層ビルを 遠見して 浦安に釣る 江戸前の鯊 東京都・高須 敏士(09.08.03)
*産卵に 甕の来る浜 総出なり 6トンのゴミ 拾いて待てり 浜松市・松井 恵(09.06.08)
*釣りに飽き 舟屋に昼寝せし事も 伊根はのどかな 漁師町なりし 川西市・北浦 勝(09.06.01)
*黄に光る 山吹の花岸に咲く 渓流釣りの 竿しなりたり 須賀川市・布川 澄夫(09.06.01)
*川の面の 岸かた寄りに 浮かび来て 柳鮠餌をとる 春となりたり 西条市・沖津 克礼(09.04.13)
*円き口 閉じることなき マンボウの 動かぬ眼の 奥の憂鬱 沼津市・森田 小夜子 (09.04.13)
*冬の川 意外に浅し 石の彩 小さき魚影も 橋より見ゆる 高松市・沖津 秀美 (09.02.16)
*氷湖より 釣りあげられし 公魚は 瞬きひとつ 凍ててしまえり 盛岡市・和田 庄司 (09.01.19)
*時雨降る 四万十川に 落ち鮎を 待ちて赤目魚は 渕を動かず 四万十市・島村 宜暢 (08.12.22)
*排水の 安全性を 示すため 排水槽に 金魚が泳ぐ 福井市・佐々木 博之 (08.11.09)
*藍甕の 海にも異変が、希少なる 花烏賊・ゲンゲ・ 白海老いずこ 相模原市・松並 善光 (08.11.09)
*あのことは ほんとうにあったことなのか パソコンの海を 魚群が過ぎる 生駒市・辻岡 瑛雄 (08.10.20)
*休みには 鮴を釣りに海へ行き 魚と交わす 無言の対話 筑紫野市・二宮 正博 (08.10.20)
*秋の夜に 我が釣り上げし 石もちは 針はずす時 ぐうと鳴きおり 大和市・水口 伸生 (08.10.20)
*今頃は ビゼンクラゲを 餌にして カワハギ釣るか 故郷の海 福島市・澤 正宏 (08.09.11)
*堤防に 飛べないカモメ 一羽いて 釣り人小魚を 釣りては与う 中央市・前田 良一 (08.03.31)
*島裏は すなわち風の 裏ならん 瀬戸のおちこち 漁舟あつまる 高松市・菰渕 昭 (08.03.10)
*にぎやかに 漁船いでたる 堤防で 糸を垂らせば 海はわがもの 茅ヶ崎市・相沢 孝七 (08.03.10)
*あんこうの 裂き干し販ぐ 漁師妻 ミサは欠かさぬ 天草のひと 高松市・小林 八州男 (08.03.10)
*どぶ川に 奇跡の鯔が もどりきて 川鵜も人も 沸く早春賦 名古屋市・山田 静 (08.03.03)
*海温は 紛うかたなく 上がりおり 小鯵釣りに来て 鱏(エイ)の掛かれば 舞鶴市・吉冨 憲治 (08.02.11)
*おお岩魚 越冬岩魚 黒岩魚 魚体荒(す)さびて 静けき岩魚 秩父市・浅賀信太郎 (08.01.04)
*まぶた持つ 鮫のかなしみ 瞼なき 鯛のさみしさ 共にせらるる 志摩市・広 波青 (07.12.10)
*ダム化せし 霞ヶ浦の 水死にて ウナギ・エビ・フナ・シジミ ほろびぬ 香取市・関 沼男 (07.12.17)
*悠然と 腐敗の大河 泳ぎ来し 巨魚俎板に 載せられており 大和市・水口 伸生 (07.11.19)
*知床の 連山岬 まで晴れて 浜に鮭釣る 竿二百本 網走市・安田 達郎 (07.10.08)
*発泡スチロール 氷水より 鋼めく 光を放つ 秋刀魚を引き抜く 沼津市・森田 小夜子 (07.10.08)
*秋めきし 午後の水面に 鯔はねて ふるさとの海 機嫌良いらし 大和市・水口 伸生 (07.10.08)
*海見たし 泳いでみたし 釣りしたし 雨に濡れたし 落葉踏みたし アメリカ・郷 隼人 (07.10.08)
*浮標に 灯の点る頃には 切り上げん 岸壁端に 独り小鯵釣る 舞鶴市・吉冨 憲治 (07.09.25)
*辛口の 地酒と鮎の 塩焼きを 胃の腑に送る きょうは立秋 鳥取県・表 いさお (07.08.27)
*栗の花 匂えば遠き 思い出に 楠蚕割きて テグス採る子ら 上越市・宮沢 君代 (07.07.09)
*学校の 田に水張れば カブトエビ 湧くがごとくに 泳ぎ始める 八尾市・水野 一也 (07.07.09)
*「ストレスで 味が堕ちる」と 漁師らは 釣りたる鱚の 首をへし折る 調布市・水上 香葉 (07.07.02)
* ポイントの 岩礁とテトラ 除かれて 港湾整備 本格化せり 宗像市・巻 桔梗 (07.06.18)
* 釣り上げた チヌを捌いて 鍋にして 鬼を集めて 酒盛りをする 生駒市・宮田 修 (07.06.18)
* 片手漕ぎ 片手突きして 海鼠獲る 荒磯の波の 今日穏やかに 坂戸市・山崎 波浪 (07.06.18)
* 懸命な 眼(まなこ)のどこか お道化いて 堰にきらりと 若鮎は躍る 東京都・倉地 克次 (07.06.04)
* 新緑の 島周辺に 鰆釣る 船あつまりて 静かなる朝 高松市・菰渕 昭 (07.05.21)
* 生木焼べ(くべ) 山魚女飯炊く 山神祭 竈主(かまどぬし)屈み まず口漱ぐ 渋川市・蓼科 麟太郎 (07.05.21)
* 白子(シラス)料理 食感もよく 美味なれど 浜の漁師は 鰯をぞ待つ 水戸市・松下 亨 (07.05.21)
* 立ち入れば 浅蜊次々 初夏を吐く きのう大潮 朝の厨房 名古屋市・藤田 恭 (07.05.121)
* 山峡の 村に初孫生まれけむ 鯉堂々と 中空にあり 熊本市・近藤 光弘 (07.05.21)
* 祖父・父が 交配つづけし 金魚なり 祖父の眼をして 子が飼いている 茅ヶ崎市・相沢 孝七 (07.05.14)
* 鯔跳ねる 河口まで来て いっせいに オール休める ボート部の船 沼津市・森田 小夜子 (07.05.14)
* 花筏 くずして鯔が 遡りゆく ゆくりなくしずけき 朝の街川 名古屋市・長谷川 安子 (07.05.14)
* 我が里は 腹赤くして 子を宿す 桜ウグイを 愛魚と言いし さくら市・大場 公史 (07.05.14)
* 船縁で 真鯛のアワセ 図りおる 会議の淀み 海原として 横浜市・鶴川 博 (07.01.29)
* 清流が 戻り魚棲み 鳥の来て 人ら去り行く 街となりたり 夕張市・美原 凍子 (07.01.15)
* 街中を 流れる川に アオサギが 棲みて魚捕る 捕れるまで待つ 熊本市・徳丸 征子 (07.01.15)
* 崩れんと して立ち直る 一瞬を 真鰯の群れ 鋭く光る 東京都・松本 秀三郎 (07.01.15)
* 昨日も今日も 鰰食べて 明日もまた ブリコを啜らん 浜は大漁 能代市・佐々木 克子 (07.01.15)
* 鯔のごと 町名つぎつぎ改変し とどのつまりは 名もなき町に つくば市・中井田 由美子 (07.01.08)
* 釣りおれば 画面にて観し 巨いなる 越前くらげ ぬたり現 舞鶴市・吉冨 憲治 (06.12.10)
* 皮膚の色で 値打ちのきまる 鯉たちが 盥の中で うごめきており 東広島市・水越 龍郎 (06.12.10)
* 秋の陽を 浴びて鯊魚釣り する人を 車窓に見ている 喪服の我は 東京都・鹿野 文子 (06.12.10)
* 秋空の きょうの真澄を 見んとてか 淀の河口を 鯔のまた跳ぶ 大阪市・池知 ひさし (06.11.20)
* 速やかに 北朝鮮の船 出港し 夕の湾内 鯔跳ね頻る 舞鶴市・吉冨 憲治 (06.10.02)
* 釣り針に 注意と記すが おもしろき イシモチ二匹 スーパーに買う 松戸市・猪野 富子 (06.10.02)
* 草丈は 子らすっぽりと 隠しつつ 釣竿が行く 海への道を 東京都・進藤 多紀 (06.11.06)
* 鮟鱇の 貌なき貌の 目に泪 吊り下げられて 捌かるを見ぬ 新潟市・岩田 桂 (06.10.02)
* 昂ぶりを 三枚におろす 釣果なる 鯵の形に 濡れるまないた 東京都・花 美月 (06.10.02)
* ハゼのぼり 川鵜あつまり 人が釣る 都田川の 秋のにぎわい 浜松市・松井 恵 (06.08.07)
* ひっそりと 父と息子は 魚釣る 日本列島 ゆっくりと秋 岡山市・奥西 健次郎 (06.09.25)
* 熊野灘 薄日に凪ぎて 一艘の 漁船ゆたかに 帰り来たれり 奈良市・福岡 康司 (06.08.07)
* 橋影に 入りし鯉の 鮮やかに 真夏の日差しに 池の暗める 横須賀市・丹羽 利一 (06.07.09)
* 釣れてよし 釣れなくてもよし 寧日を 寡黙の浮子と 対話楽しむ 銚子市・小山 年男 (06.07.09)
* 海面より 大き火玉の わき出でて 熊野の荒磯に 朱波しぶく 枚方市・秦 順之 (06.07.09)
* 烏賊釣りの 漁り火沖を 占拠して 原発の明かり 漁り火に紛れる 福井県・大谷 静子 (06.07.09)
* 口元を 引き締めながら 遡上しゆく 若鮎の群れ 堰に輝く 松山市・吉岡 健児 (06.06.20)
* 華やかに 熱帯魚の群れ 過ぎ行くを 岩間に見上ぐる ウツボの憂鬱 ひたちなか市・篠原 克彦 (06.06.12)
* 舫い(もやい)いる 小船と岸の 細き間に 集いて遊ぶ 春のくさふぐ 舞鶴市・吉冨 憲治 (06.06.5)
* 少年の 網を感知し 矢のごとく 逃げてイトヨは 泥に腹這う 長岡市・伊藤 正 (06.05.29)
* 魚市場 糶(せ)り残されし マンボウが ぽつんと一匹 エンゼルのよう 志摩市・田島 もり (06.05.29)
* 山陰の 暗き入り江に 月立てば 固唾を呑みて鱏(エイ)も 見るらんか 対馬市・犬束 嘉美 (06.05.15)
* 水槽の 不機嫌そうな 大鯛は さも似たりかの 配属将校に 新潟市・伊藤 隆 (06.05.08)
* 立ち上がり なぜ立ったかを 忘れいる 空に翻車魚の ような浮雲 東京都・佐藤 圭子(06.05.08)
* 唐揚げの 虎魚なりけり 是非もなき 恨みの貌を ばりばりと喰う 新潟市・岩田 桂(06.03.20)
* 取れたての イカナゴ並び スーパーに 故郷と同じ 春が来ている 生駒市・宮田 修(06.03.20)
* 魚にも 貝にもならず アメフラシ ましてや地上に 争いもせず 岐阜市・後藤 進(06.02.26)
* 目の中に 棲みいる暗き 目高二匹 雪晴れの夕の 空に泳がす 秋田市・渡辺夏子(06.01.23)
* 君は吾が 帰るべき河 時を経て かの遡上する 魚らのように 東京都・守山茂靖(06.01.23)
* エイは眼を 貫かれたるまま 海風に はたはた乾き 冬深みゆく 沼津市・森田小夜子(06.01.23)
* 鮎よりも 釣り人多しと 話し合う 解禁の朝の 橋の上にて 四万十市・島村宣暢(05.12.26)
* うつむいて 試験問題 解きながら 魚となりしか 稀にあおむく 東京都・嶋田恵一(05.12.26)
* 鰰(ハタハタ)を 呼ぶ嵐だと 荒れ狂う 音にもはしゃぐ 海辺の師走 能代市・佐々木克子(05.12.26)
* 潮待ちの 大伴旅人も 釣りにけむ 沙魚(ハゼ)の子孫を 鞆の浦につる 福山市・武 暁(05.12.5)
* 三億の 越前海月(クラゲ) 押し寄せて 浜は嘆きの 網を干し上ぐ 新潟市・岩田 桂(05.12.5)
* 蝦に釣らるる 鯛のぶざまもさりながら 西瓜に釣らるる 黒鯛(チヌ)あわれなり 福津市・大庭愛夫(05.10.19)
* クツクツと 啼きつつ釣られ来しフグの 眼(まなこ)のみどり 溢るるごとし 三島市・淵野里子(05.10.17)
* あの人も あの人も来た あの人も 鮎解禁の 合図待つ川 東京都・相沢茂樹(05.7.17)
* 漆・箔・ ラメ飾りたる 加賀毛鉤 流れに揺れて 鮎を魅惑す 金沢市・栂坂幸雄(05.7.17)
* 大海より 鰹引き抜く 一本釣り 男はいいなあと 思う夏来る 飯田市・熊谷勝子(05.7.17)
* エビ地獄 一度入れば 出られない 筒なり沈めて テナガエビ捕る 四万十市・島村宣暢(05.7.17)
* ヤリ烏賊も うにもあがるや島瀬戸は ひとつばたごの 花ざかりなり 堺市・鶴野郁子(05.7.17)
* わが町の 山に川鵜の 住みつきて 思う存分 魚呑み込む 京都市・佐藤 佳代子(05.7.4)
* ビシバシと 鱗を剥ぎて 頑丈な 骨をたちきる 桜鯛なり 鳥取県・表 いさお(05.5.20)
* 小春日に 夫と釣り糸 垂れし浜 美浜の海は 名のごとく澄む 名古屋市・木村久子(11.8)
* 産卵を 終えたる鮎は 安堵せし ごとく三途の 川流れゆく 横手市・弾正光之介
* スズメダイ 雀群れたる ごときにも 鰭チカチカと 出して泳ぎぬ 高崎市・門倉まさる
* 産卵を 終えたる鮎の 亡骸を あまたのウグイ ついばみており 八王子市・滝上裕幸
* 小女子の 釘煮はひねもす 匂い立ち 松帆の浦に 青き月出ず 吹田市・小林 昇(05.4.4)
* 銀色に 青き斑点 光らせて 鰆並べり ボストンにも春 ボストン在・久下朋子(05.4.25)
* クエの顔 志村喬に 似ていると つくづく思う 春のうららに 沼津市・森田 小夜子(05.5.2)
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四季の魚と釣りを詠んだ俳句集 (世界文化社刊・俳句歳時記・・四季の魚より)
[春の魚]
公 魚 : わかさぎは 湖の泪 かも知れぬ 長谷川 秋子
公魚の よるさざなみか 降る雪に 渡辺 水巴
雷魚殖ゆ 公魚などは 悲しからん 高野 素十
わかさぎは ほのめく梅の 匂かな 久保田万太郎
公魚を焼く 香わびしき 浦祭 奥峰 輝冶
暗き湖より 獲し公魚の 夢無数 藤田 湘子
鱒 : 鱒釣の ほか何もせぬ 一軒家 阿波野 青畝
鱒の子の すでに紅らむ ほととぎす 石田 波郷
鱒池に ひとの近づく 雪景色 飯田 龍太
諸 子 : 諸子釣る 近江の雨を 肩にして 山本 桜童
針 嘴魚 : 突堤の 呼びあふ声や 細魚波 門馬 あだん
美貌なる 細魚の吻は 怖るべし 安住 敦
鯛 : よこたへて 金ほのめくや 桜鯛 阿波野 青畝
桜鯛 水流したる 俎板に 川崎 展宏
目 張 : 目張の目 人の世の何を 見つむるや 片山遍照子
滑稽とも 哀れとも灯の 目張かな 井田 玉江
いかなご: いかなごや 殊に渦巻く けふの潮 染谷 幸子
鰈 : 干鰈 鰓にうっすらと 忘れ砂 佐々木 魚風
路地多し 到るところに 鰈干す 金子 兜太
[夏の魚]
鮎 : 鮎の背に 一抹の朱の ありしごとし 原 鼎
てのひらの 鮎を女体の ごとく視る 沢木 欣一
鮎宿に 持ち込まれたる 地酒かな 皆川 盤水
山 女 : 滝落ちて 山女のあそぶ 淵の見ゆ 水原 秋桜子
火の色の ほかはしづかに 山女焼き 和知 喜八
瀬をのぼる 山女の背鰭 日を返し 吉田 愛子
岩 魚 : 岩魚の斑 みどりさす夏 来むかえり 千代田 葛彦
岩魚棲む 上下を断ち 地獄渓 福田 蓼汀
虹 鱒 : 虹鱒の 身をひるがへす 紅曳きて 戸田 明子
穴 子 : 穴子釣 闇に声して 遠ざかる 鈴木 鶉衣
港を出る 船のあかるさ 穴子釣 瀧 春一
鯖 : 鯖釣や 夜雨のあとの 流れ汐 飯田 蛇笏
夕浪や 鯖釣る船の 行きやまず 尾崎 紅葉
鯵 : 朝顔の 庭より小鯵 届けけり 永井 龍男
鯵船の 右も左も 荒岬 久永 芦秋
平 鰤 : ひらまさや 乗合船の 明けそむる 村山 国子
あざやかな 平鰤をどる 甲板に 松村 砂丘
石 鯛 : 雨なんぞ 石鯛の尺 釣り上げし 水沢 龍星
石鯛や 海の男の ますらをぶり 小久保 波良
鱚 : 二タ色に 断たれたる海 鱚を釣る 阿波野 青畝
鱚船に 研ぎたての波 光寄す 石塚 友二
鱚添へて 白粥命 尊けれ 石田 波郷
べ ら : 釣り上げし 青べら青き 波に捨つ 多摩 茜
だぼ鯊 : 居酒屋の だぼ鯊に似し 男かな 光明寺 三郎
だぼ鯊の 釣れてしまうも 憂かりけり 山本 桜童
釣り来しが だぼ鯊 猫も振りむかず 小野 昌枝
い さ き : いさき一尾 釣りしのみ芦の 夕かげり 逸見 恵三
釣り人の 昼餉を磯の 焼きいさき 藤田 志洸
黒 鯛 : 黒鯛を 釣る灯台の 灯をうつし 井上 廣子
ちぬ釣の 寄す波光る 魚籠の中 清水 とし子
皮 剥 : うまづらかわはぎ 長き泣き顔 いかにせん 加藤 楸邨
鯒 : 鯒の口 のぞき込む児に 秋近し 椎橋 てる子
鮎 並 : 父が釣る あいなめ帰省の 子の夕餉 稲葉 玉江
か さ ご: むらさきの 潮に鰭振る かさごかな 山村 政子
烏 賊 : 烏賊船や 沖は祭りの ごとくあり 十河 和子
[秋の魚]
鯔 : 鯔(ボラ)はねて 暮色の迫る 舟溜り 山県 桂邨
鰡はねて 海のさびしさ まぎらわす 林 蓬生
このしろ: 鍛冶の火に このしろ焼くと 見て過ぎぬ 山口 誓子
鰯 : 鰯引く 夕日に漁夫の 声揃う 林 蓬生
鰯来て 日と月とある 小村かな 大峯あきら
秋刀魚 : 星降るや 秋刀魚の脂 燃えたぎる 石橋 秀野
ひとり祝(ほ)ぐ ことあり秋刀魚 一匹買う 殿村 菟糸子
鮭 : 鮭取りの ししむら濡れて 走りけり 沢木 欣一
流し網の 尖に灯の点き 鮭をとる 石原 八束
十勝川 注ぎにごれる 鮭場かな 阿部 彗月
かます: 産み月の 海女がかますを 並べ干す 大嶋 志葉
かます焼く香の露地いそぐ秋の暮中村孝子
干しかます酒の肴に求めたり武田清子
太刀魚 : 太刀魚の 銀剥がれけり 切られいる 徳永 夏川女
しいら : 大しいら 魚拓たかだか 釣りの主 渡辺 久美子
針先に しいらのおでこ 見えて来し 岸上 波人
鯊 : ひらひらと 釣られて淋し 今年鯊 高浜 虚子
鯊船の 小錨砂に 据わりけり 永井 龍男
橋脚の 日だまりに釣る 鯊の潮 星野 廣太郎
鱸 : 遡る 百里の江なる 鱸(スズキ)かな 松根 東洋城
まっすぐに 鱸の硬き 顔が来ぬ 岡井 省二
[冬の魚]
潤目鰯 : うるめ焼く 人にたのしく 皿はあり 永田 耕衣
鮪 : 鰭強く 刎ねいし鮪の 腸(わた)を抜く 山口 誓子
鮪競る 男の世界 覗きたり 鈴木 真砂女
鮪食み 旅路の母を 思いおり 蠣崎 一香
金目鯛 : 金目鯛 大き虹彩の 目を持てる 山本 貞
金目鯛 銀目鯛並び 売られをり 吉崎 千代子
鰤 : 裸火に 鰤(ブリ)の白腹 百数ふ 細見 綾子
沖が揉む 鰤網夜毎 にごり酒 中島 武雄
甘 鯛 : 魚店の 甘鯛どれも 泣面に 上村 点魚
甘鯛の 味噌漬もよし 京泊り 矢尾板 連草
塗り膳の 甘鯛北山 しぐれかな
平松 泉
舞 鯛 : 舞鯛裂く 砥石は水を 惜しみなし 井上 廣子
舞鯛釣りし 釣宿炉辺の にぎはへり 川上 美恵
む つ : 明日またも むつ釣りといふ ひとと酌む 岩本 真紀郎
寒むつは 口に余れる 目のうまし 山志田 以代
あ ら : 民宿の 生簀にあらを 見し寒さ 新山 ふじ
あら料理 し終えて青き 寒三日月 石橋 昭子
河 豚 : 河豚喰うや 港の露に 頬ぬらし 依田 由基人
河豚貼った 皿透明に 死者あるく 大中 祥生
鮟 鱇 : 鮟鱇の 愚にして咎め なかりけり 村上 鬼城
鮟鱇の 骨まで凍てて ぶちきらる 加藤 楸邨
鮟鱇の 風つつぬけに 乾きけり
大坪 宣子
鱈 : 鱈さげて 夜間工事の なか通る 福田 甲子雄
たらちりや 母の灯影を すくひけり 老川 露光
魴 : ほうぼうの 煮こごる姿 いかめしき 阿波野 青畝
ほうぼうの 髭脚立てて 貌そろふ 秋山 牧車
虎 魚 : 鬼おこぜ 背の鰭かっと 氷詰め 加藤 知世子
かりそめに をこぜに刺され 病みにけり 浜口 今夜
鬼をこぜ 魚籠いっぱいに 怒りをり 中筋 味竿
平 目 : 器用貧乏 網の平目を 裏返す 山本 詩翠
値の上がる までの生簀の 寒ひらめ 和田 雪華
刺身うまし 平目地酒の 杯重ね 光明寺 三郎
わたり蟹: わたり蟹 月なき岩の 根にひそむ 志摩 芳次郎
地引網に かかりしわたり 蟹あはれ 丸田 敏子
わたり蟹 逃げまどひをり 汐溜り
林 満子
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