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                                                  釣り人の論壇

    
       釣り人が単に釣りを楽しむだけでなく、日頃考えている事や意見を発表するコーナーです。
       どなたでも気軽にどんなことでも寄稿してください。

                            

  渥美半島・表浜で海亀の産卵行動を守る活動などで知られているNPO法人・表浜ネットワーク代表の
  田中さんが、編j者所属の伊勢三河ネットワークに配信されたメールをご紹介します。(編者・田淵 稔)

    渥美半島の海を憂う NPO法人・表浜ネットワーク 田中 雄二      09.02.16

田中@表浜です。
  いつも海岸から海を見ていて日々感じていることを率直に言わせてください。
  最近の漁業の問題。本当に問題の根源はどこにあるのか。
表浜では毎年、3月ぐらいから晩夏まで、早い時間では午前2〜3時くらいと暗い内から漁船がどっと出てきます。
  初夏の漁のピーク時は真っ暗な海に漁船の明かりが数百隻はあるかと思うぐらい、海が漁船の集魚灯で埋め尽くされます。
明るくなってくるとその全貌が見えてくるのですが、三隻の漁船が一組の二艘引き漁船が良い漁場の場所取りで競い合って浅瀬の海をもの凄い勢いで走り回ります。
その様相は岸から沖まで何重にも重なる漁船と、引く網は根こそぎ魚だろうが何だろうが取り尽くす勢いです。
沖からは漁船同士が進路の取り合いに怒号が聞こえてくるほどです。
これが普通の勢いのある漁と思うのかも知れませんが、東の静岡県側は午前6時からと時間規制が決まっているようで、暗い内は漁船は姿ありません。
それに静岡県側の漁船が少しでも愛知県側に入ると、海上保安庁の巡視船「天竜」が飛んできます。愛知県側とはまったく様相が違っています。
愛知県側はシラス漁の船はほとんどが篠島か形原などの漁船と聞いていますし、遠州のフグなどのように実は表浜での漁が多いようです。

  最近は恒例となっているようですが、形原や篠島の漁師が足助の辺りの植林活動を行っているといった記事を見ます。
果たして、この活動は行政・官・学によって問題のポイントが意図的か置き換えられているのではと、いつも浜から海を見ていると感じてきます。漁場自体が崩壊寸前だからです。
  問題は規制の無い我先に争うように根こそぎ獲る漁の仕方と、渥美半島の河川から大量の畜産施設や畑から流れ出る窒素・燐や農薬
そして様々な構造物による砂浜から浅瀬域・沿岸砂州という小魚の育成域の破壊ではと感じています。
こんなに沿岸の問題が切羽詰まっているのに、何を今更、漁民が遠い流域上流の間伐・植林かと感じる次第です。
  確かに流域に遠い因果関係はあるのでしょうが、現実は沿岸・海洋域という根元が崩壊しているのです。
渥美半島のある漁港の河川ではほとんど原液に近い濃度の農薬が流されていると聞いています。古くなった農薬を直接捨てていると。
  渥美半島沿岸の小さな生き物、以前は代表的な生き物であったフナムシがここ30年で消え去ったことを知っているのでしょうか。
今、確認出来るのは赤羽根漁港と伊良湖岬あたりでほんの僅かだけでした。
砂浜は一見、生き物の姿が認められないように映るかも知れませんが、無数のハマトビムシなどフナムシ同様、分解する掃除屋が生息しています。
沿岸域の魚は、ハマトビムシやフナムシのような浜辺の生き物や、ハネアリなど沿岸域の生き物に支えられています。
  今でも沿岸では様々な廃液などが違法的に流されていますし、降雨後の小さな河川からは堆肥や畜産施設から大量の屎尿汚水が流れ出ます。
農業日本一と称している地域の光の陰でしょうか。過剰な土地改良や農地拡大によって流れ出るシルト状の土砂は沿岸砂州の砂質にも影響を与えているでしょう。
また、砂自体の流れが減少し、シラスなどや鰯の育成域の沿岸砂州も加速度的に消え去っているのです。
ここ数年、冬の表浜は海が汚濁が続いています。一昨年前は中山水道の浚渫が原因と聞いていましたが、浚渫が終わった後も汚濁は続いています。
黄緑色の気泡は藻類などが繁殖しているのでしょうか、富栄養化が慢性化し進んでいるようです。
  以上の沿岸の問題が、いつまで経っても理解されない限り状況は変わらないと。ジレンマをいつまでも感じています。

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               「森は海の恋人」運動を見聞きして              06.02.12
                                    JOFI愛知 大田 豊明

  昨秋の早朝、名古屋から和歌山に車を走らせていた時のことです。旅の目的は磯の浦で開催されるキス釣り大会。この時間帯はNHK第一「ラジオ深夜便」を聞くのが常です。その番組「心の時代」は4時に始まり、毎回魅力に溢れた人生の達人達が登場します。必ずしも有名人や大学教授ばかりでなく、一芸に秀でた方なども含め、その道のプロとしての生き様や人生観について対談形式で進めていく、人間味漂う番組です。その日は、東北の牡蠣養殖業・畠山重篤(はたけやましげあつ)さんが紹介されました。「おっ、漁業関係者なんて珍しいなぁ」と思いながらラジオのボリュームを上げました。

  「私は、三陸リアス式海岸の静かな入り江(気仙沼湾)で牡蠣やホタテ貝の養殖をしている一漁民です」・・・自己紹介に続き、「父の代からの養殖漁民で私が二代目。私が父から引き継いだ海は実に豊かな海でした。牡蠣やホタテ貝は、種苗(稚貝)を海に入れておきさえすれば何もしなくても大きく育ったし、海中を覗けば、メバル、鯔、スズキ、鰻などが群れをなしていたものです」「ところが昭和40年代から50年代にかけて目に見えて海の力が衰えていきました。貝の育ちは悪くなり、赤潮などが頻繁に発生するようになってきました。同業者が集まると、「この仕事も俺達の代で終わりかなあ」と、諦めムードだけが漂い、浜は次第に活気を失なっていきました。そんな時、もう一度昔の海を取り戻そうと、ひとつの運動が沸き起こりました。
  時に平成元年、その若きリーダーが畠山さんで、「森は海の恋人」と称した「植樹運動」はまたたくまに全国に広がっていきました。気仙沼湾に注ぐ大川上流の山に広葉樹を植林し、河川流域の住民に理解と協力を求め、山の子供たちを海に招いて体験学習をしてもらう一連の活動です。学習に訪れた子供達からの感想文が届き、「朝シャンで使うシャンプーの量を半分にしました。給食後の歯磨きの時、歯磨き粉の量まで注意しています。下流の海の人たちに迷惑をかけられません」という内容だったそうです。
  番組の最後に畠山さんはこう語っておられました。「山に広葉樹を植え、これらが一人前になるには50年という長い時が必要だ。ところが体験学習に訪れた小学生は10歳以上の子供達。人間は20年で一人前の大人になる。山への植樹運動と同時に子供達に自然の大切さを教えるともっと短期間で環境は改善されるだろう。これからは子供達に教えることも大事なことだと気づきました」・・・と。

  我々が目指し、実践している、「釣りを通じて社会貢献」活動も同様です。毎年行っている親子釣り教室、水辺の清掃活動、各種自然環境運動は子供達の豊かな心をはぐくみ、自然や仲間に対する思いやりや、いたわりの気持ちを育てていると思います。
わが国で最初にスタートした釣りインストラクター組織、それが「JOFI愛知」です。その誇りとパイオニア精神をもって時代の先頭を走りたいと念じています。今年も楽しく遊びましょう。そして同じ考えをもった仲間に加わってもらい、活動の輪を広げていきましょう。「いい町や村にしたい」・・・簡単な言葉です。その力の源は次代を担う愛くるしい子供達に潜んでいるのではないでしょうか。

  畠山さんは、ご自身の活動を一冊の本にまとめ出版されました。植林運動に留まらず、リアスの意味、ヨーロッパとのつながり、釣り、昔の漁村のなりわいなどその巾は広く、興味溢れるないようです。(株)文芸春秋「文春文庫」・「リアスの海辺から(森は海の恋人)」畠山重篤著・・02年5月10日初版、560円。
  もう少し文庫本の内容をご紹介しましょう。
[甘藻のジャングルの蟹を獲り終えると泥場の浅瀬に移動する。カレイがいるからだ。まるでほうの木の葉が散らばっているように群れている。昼間アサリ掻きをした跡なので、潰れたアサリの貝がらや、ゴカイなどのエサを目当てにカレイが上ってきている。アサリの肉が大好物なのだ。飛び出た目玉を右に左に動かしながら、しきりにつっついている」これは「夜盗棒(よどぼう)」と呼ばれる漁法で、早春の夜、小船の舳先に金網で作った籠をぶら下げ、その中に火を燃やして明かりにして、藻場や浅瀬にいる蟹や魚をとる漁のことです。当時はバッテリーなどない時代、明かりは松の根っこの「たいまつ」です。夏場に松の切り株から根っこを掘り出し、これを薪にして燃やしていました。]
  ・・・・釣りの教本としても興味深い記述ですね・・・・

また彼は「魚介類の味はその海によって違う」と断言しています。我々はこの基本的な意味をどれだけ分かるでしょうか。
  ほかに、海辺の暮らしにどうしても欠かせない仕事人・潜水夫にも触れています。それも伝統的なカブト式潜水法の「三陸潜り」です。自分達の着る股引やセーターなどを編んでいくくだりや「ウニと巻貝を食べない理由」など・・・なるほどと思わせます。
  文庫本のあとがきで著者は「好奇心さえ失わなければ、人生は実に楽しいものになる」といい、「好奇心、これに勝る宝はない」と結んでいます。
  解説を担当された木村尚三郎・東大名誉教授は「これからの時代、幸せはカネでは買えない。いい空気と水、美しい緑と花のなかで、死ぬまで笑顔とともに、そして仲間とともに、自ら手足を動かして働くことが幸せというものだ。このことをしみじみ感じさせてくれる村、それが文中の室根村である」と。
   ・・・ご一読をお奨めします。

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         外来魚問題について最近の動きから    06,01.01  (JOFI愛知)田渕 稔

     昨年暮れに朝日新聞に連続してブラックバス対策に関する記事が掲載された(内容下記)。
ブラックバスが生態系を乱す害魚として特定外来生物に指定され、蜜放流などを禁止する、
法律が制定施行されたが、罰則が無いため実効は疑問視されている。
琵琶湖などでは、滋賀県が県条例で釣り人にリリース禁止を求めている。
  日本古来の生態系を守りたいとする市民団体グループや、
旧来の魚を獲って生計を得ている職漁者等が中心になって、積極的にブラックバスを駆除しようと、
具体的な手段を考えることを含めて動き出している。
  一方、遊び(趣味・スポーツ)としてのブラックバス釣りが、
主として米国から伝えられたルアーフィッシングにより、急速に若者を中心に普及・定着してきた。
このことがまた、急激な勢いで全国の河川湖沼にバスが生息し、害を及ぼしている事も事実。
釣り人としては、釣って面白いバスが駆除されて、全国の手近かな場所で遊べないのは寂しいし、
生態系を乱すと言われればそれもそうだと思うしで、心は揺れる。
そこで釣り人が出来る事と言えば、
(1):蜜放流は絶対しない、させない。
(2):リリースしないで、持ち帰って料理して食べる(工夫して)。
(3):既に一部の湖沼で行われているように、全国各漁協の決断により、管理釣り場をつくり、
    ブラックバス専門に釣らせる。その他の場所のバスは駆除する。
などの、施策が必要であろう。罰則の強化は最後の手段。
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(朝日新聞掲載記事)
     ブラックバスに全国規模の包囲網・・・18団体が駆除で連携 05.12.朝日新聞(神村正史)

   水辺の生態系保護に取り組む全国18の市民団体が「全国ブラックバス防除市民ネットワークを結成し、ブラックバスが壊した生態系を本来の状態に戻そうと活動を始めた。
ブラックバスが今年6月施行の外来生物法特定外来生物に指定され、飼育や移動、放流などが原則禁止されたことを受け、全国的に駆除に乗り出す。06年5月28日には各地で駆除を目的にしたイベント「全国ノーバスデー」を催す。
   元環境省自然環境局長で水生生物保全研究会代表理事の小林光さんや、写真家で生物多様性研究会代表の秋月岩魚さんらが呼びかけ、「琵琶湖を戻す会」「ゼニタナゴ研究会」など全国15団体が11月に東京で発起人会を開いた。その後、さらに3団体が加わった。
   駆除には、産卵できるかごを設置して卵と親魚を一網打尽にしたり、電気ショックを与えて船の周囲の魚を一時的に気絶させてブラックバスのみを捕まえたりする方法がある。
   加盟団体間で情報を交換し合って駆除に乗り出し、市民にも冊子などで駆除の必要性を啓発する。
学生や自治体職員を対象にした駆除の研修も計画している。
「ノーバスデー」は来年5月28日。加盟団体が各地で市民に参加を呼びかけ、シンポジュームも開く。
駆除目的で湖沼などのブラックバスを釣ったり、地引網を入れたりする。
   事務局長を務める小林さんは「地域の生態系を守りたい、取り戻したいという一心から活動を始めた」
と話す。
       同ネットへの参加などの問い合わせは、事務局を兼ねる水生生物保全研究会まで。
                                Tel;03−5332−3362
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     ブラックバス駆除について・・・在来魚保護策まず一歩 05.12.29  朝日新聞(佐藤陽)

      環境省は6月施行の外来生物法で、ブラックバスを「特定外来生物」に指定、運搬や保管を禁じた。
滋賀県はすでに03年、釣り人のブラックバスのリリースを全国で初めて条例で禁止した。
「害魚」のイメージが広がり、バス釣り客もめっきり減った。影響は釣り具店にも出ている。
地元の守山市でルアーショップを経営する大久保久さん(37)は、店の売り上げが条例施行前より6割減った。
    一方、ブラックバスなどの影響で、鮒ずしの材料となるニゴロブナなどの漁獲量が激減した漁師たちは、
法規制を歓迎している。同県漁連の永尾一夫福会長(69)は「条例で禁止されていても罰則が無いので、
リリースしている釣り人はいる。県はもっと監視体制の強化を」と訴える。
市民団体「琵琶湖を戻す会」の高田昌彦代表(43)も、法規制を歓迎しつつ「これからがスタート」と気を引き締める。高田さんは約5年前から、市民に呼びかけ、ブラックバスなどの駆除を続けてきた。「行政のお墨付きを得た事は、我々の大きな追い風。今後は、具体的な駆除方法を考えていかないと」と話す。来年1月には、琵琶湖に研究者らを集め、外来魚の情報交換会を開き、具体的な駆除対策を考えるという。
    一方、「ブラックバスを琵琶湖から取り除けば、それでいいのか。逆にブルーギルが増える可能性もある。湖全体の生態系を考えた上で、在来魚保護の方策をじっくり議論すべきだった」と、滋賀県釣り団体協議会の加藤誠司会長(45)は話している
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<編者注>
   日本古来の在来魚の生態系を外来魚の食害から守る事に釣り人の一員としても異論はない。
特に琵琶湖でこれ以上増えないように具体的な駆除方法にまで踏み込んで考え、実行することに異を唱える積もりはない。
問題は;
  * 釣り人が米国などから学んだキャッチアンドリリースという釣りかたが、
     魚食民族の日本でも定着してしまって、釣り上げた魚を食べない事。
  * ブラックバスだけが眼の敵になっているが、ブルーギルはどうするのか。
     ブラックバスとブルーギルは同じ魚食魚として敵対関係にあり、最近ではその旺盛な繁殖力から、
          数を伸ば していて、むしろブラックバスより影響が大きい。
           しかも、釣り人はブラックバスはターゲットにするが、ブルーギルを好んで釣る人は殆どいない。
           バスの駆除が進めば、益々ギルが勢力を拡大し、問題を解決する事にならないのではないか。
          圧倒的に数の多いギル駆除対策こそが早急に望まれる。
     *  釣り人としては、釣りの面白さには欠けるが、ギルを釣りの対象として取り上げ、
          子供でも簡単に釣れる魚として宣伝し、数釣りトーナメントなどにより駆除の一助にする方法もあるのでは。
          それと釣り上げたギルを料理して食べるレシピの工夫と普及も同時に必要であろう。

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       [釣り好きの作家として高名で、釣に関する著書も多数ある高橋 治氏が、
       自著「つれ釣れなるままに」(筑摩書房・刊、1989年6月)の巻末で、以下のようなご意見を述べておられます。
       既に15年も前に現状を予告されている事に、あらためて敬意を表します。] JOFI愛知・田渕 稔

                                         釣り人よ、立ちどまろう <全文>

   釣り人口二千万人、いや、三千万人といわれ、釣りは空前の盛況を呈しているように見える。だが、その活況はいったい誰にとって喜ばしいものなのか。
釣り人は釣れなくなったことを嘆く。資源を分かち合う漁師たちは、釣り人のマナーの悪さに怒りを燃やし続けている。客を乗せれば確実に傭船料や渡船料が手に入る人たちは別だ。しかし、我が手に糸を握る人たち、つまり、釣る人たちは空前の釣りブームの中で決して満足はしていない。
   そこで、静かに腕を組んで、十年前の釣りと現在の釣りとで、較べてみてほしいことがある。
伊豆の代表的な釣りものだったカイワリはどこへ行ってしまったのだろう。何も釣れなくても、最後にあれを狙えば土産ぐらいにはなると考えられていたカゲキヨが、釣れた釣れたと話題になるというのは、一体どうしたことなのだろう。それよりなにより、メダイを狙う釣りが成立しなくなった。たまに姿を見せれば貴重品のように思えるが、これがメダイかと考えこむほど小さい。小さいといえば、釣れてくる伊豆のカサゴはなぜあんなに小さくなってしまったのか。キンメダイなどというおよそ面白くもない釣りものが、伊豆の釣りの主役にのし上がって来たのはいつの頃からで、なぜなのか。
   釣り人であれば、こんなことにはとっくに気づいていて、今更のようないい方をするなとそっぽを向くかもしれない。誰も恐らく聞かれるまでもなく回答を自分の胸の中に持っているだろう。その回答を紙に書いてもらって集計したとする。疑う余地もなく他を断然引き離して第一位を占めるのは乱獲だろう。漁具の進歩、餌の開発、釣り人の心の荒廃、それらが複雑にからみ合って、乱獲に拍車をかけている。その上に、問題は乱獲だけではない。釣り人なら、海が本当の蒼さをなくしてしまってから久しいことに気づいていると思う。釣り人などの力では、どうすることもできないほどの汚染、そしてとり返しのつかないほどの海岸線の自然破壊・・・・。
   しかし、海の変容に、釣り人は悪しき加担をしていないのだろうか。そうとは思えない。発泡スチロールの弁当箱を投げる。ビニールを捨てる。空き缶吸殻餌のケース海をゴミ箱代わりにしてポンと投げ出す品々は数知れない。その上に、あのコマセである。磯からだけの物だったのが、似る似るうちに、広範囲に船の釣りに広がった。そして、漁師と釣り人が、互いに、お互いがやめないからだと、自分たちが使う理由にして、使用量がうなぎのぼりにふえて行く。そのコマセがさらに乱獲に拍車をかける。釣りの盛況を一番喜んでいるのは誰だろう、多分釣り道具屋、餌屋、その元締めたちだろう。こんな悪循環はどこかで断ちきらなければいけない。でないと、釣りができなくなる日がもうすぐにやってくる。
   釣り人の釣りなどつまるところは遊びにすぎない。できなければ他の楽しみを探せばいいだけのことだ。だが、われわれのこの国は海の恵みなしでは生きて行けない国なのである。
釣り人よ、この辺で立ちどまろうではないか。本音を問いただせば、なんとかしなくてはいけないと思わぬ釣り人はただの一人もいないだろう。その一人一人が、自分はこれだけはしないということをきめたらどうだろう。
コマセは撒かない。ビニールは捨てない。一定数以上は釣らない。
なんでもないことではないか。釣りには坊主がつきものなのである。から手で帰ることを覚悟なら、なぜ、コマセを使う必要がある。坊主覚悟の上なら、おかず分だけ釣れれば、望外の喜びになるではないか。ニコニコしながら、ビニールの袋をポケットに入れて帰る習慣をつければ、海の惨状には随分歯止めがかかる。
      海は恐ろしい力をひめている。かって、京浜工業地帯が米軍の爆撃で壊滅した時に、東京湾の水は見る見るうちに澄み返り、驚くほどの勢いで魚が増えた。三菱石油水島製油所が大規模な重油流出事故を起こした時、四、五年は海は元に戻らないだろうといわれた。だが、数ヶ月で海は立ち直り、一年後にはほとんどその影響が見られなくなった。臨海工業地帯の連中は、この海の自浄力に頼り、恥じることもなく、さまざまの法律を骨抜きにして、相変らず海を汚し続けている。それに加えて、自家汚染のハマチ養殖をやめない海域には、繰り返し赤潮が襲って来る。海が我慢しきれなくなった例を人間に見せつけてきているのだ。
せめて釣り人が原因を作ることはやめよう。
      海は原因を絶てば必ずその見かえりを人間に与えてくれるものなのだ。だが、絶たない限り、やはり、必ず、その恐るべき結果をつきつけて来る。釣り人ならば、例外なしに海を愛しているだろう。ましてや、伊豆に海は日本でも有数の魚類の宝庫で、自然の変化に富み、釣り人には外洋の釣り、内湾の釣りの二種を与えてくれる。キスが釣れる地先の海の、ほんのわずか沖合いで、カジキが釣れ、真鯛が釣れてイシダイも狙える。そんな海は日本全国にもそうあるものではない。そのような伊豆の海を、永遠の財産として持ち続けるか、それとも、「伊豆の海にも昔は多くの魚がいたものだ」という昔話にしてしまうのか。
釣り人よ立ちどまってほしい。どうか、この一文を、大袈裟なもの言いをするととってほしくない。
       東京湾が魚類の宝庫だったのは、つい先日のことだったのだ。かってはアオギスという魚が生きていたことをわれわれは知っている。だが、アオギスは絶滅し、東京湾の魚は不安なしには食えない。
もちろん、東京湾と伊豆の海は違う。東京湾を今日の惨状に追いこんだ元凶も釣り人ではない。だが、伊豆の海に緩やかな荒廃がひろがって来ていることを忘れてはならない。そして、今ならば、まだ、釣り人たちにできることがある。それは、人間としての誇りを固く持つことなのだ。そうすることが海を守る。
残念なことだが、三浦半島の城ヶ島では、既に違反を取り締まるための監視船が行動をj開始した。釣り人の良心に信頼を置けなくなったからである。
       私は予言するが、城ヶ島のような漁業組合は増えるに違いない。残念ながら、筆を持つ人間として、私も、増やそうという‘苦い‘論陣を張らざるを得ない。二千万、三千万の釣り人に、歯止めなしの乱獲を行い、海を汚し、腐らせる集団行動に出られては、たまったものではないからである。
       冗談ではなく、このままでは、‘かって、日本には刺身という料理があった‘といわれる日が、目の先に迫っている。現に、沖アミが大量に頭上から降って来るために、鯛は回遊をやめ、相模湾は一年中鯛が釣れるようになった。そのは、ブロイラーのような肥満児で、とうてい口にできる代物ではなくなった。それはそうだろう。泳ぎ回らない上に、脂肪分が強すぎて海底で腐る沖アミを飽食しているのだから。恐ろしい話は鯛だけではない。数年前、ワラサが一年抱卵期を早めたという研究結果が公表された。モジャコと呼ばれる稚魚が、養殖ハマチのタネとして乱獲されるために、種の保存という自衛本能が働いたというのが、推定された理由である。
      食は文化である。そして、日本の食は魚なしには考えられない。代表的な魚の二種に、生態系の変化が起きた。これは震撼すべきことである。食の危機、つまり、文化の危機と考えなければならない。
釣り人よ、せめて、文化の破壊に手をかすことはやめようではないか。
      たかが一日の遊びのために、監視船を出さざるを得ないようなことは、恥以外のなにものどもないではないか。
サンフランシスコの鮭の乗合船は、一人一匹ときめた規則を全員が守る。二匹以上釣りたい人は、釣った魚で釣れない人の権利を買う。アメリカ人にできることが、日本人にできない道理がない。
釣り人よ、人間の尊厳を、もう一度直視しようではないか。
空前の釣りの盛況を、釣り人たちが、なんの後ろめたさもなしに謳歌できるようにするために。次の世代に、豊かな海を残してやるために。

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                                     海が泣いている        

       日本の海はいったいどうなっているのだろう。私たちが愛して止まない魚たちは、この汚れた海でどんなに苦しんでいるだろうか。
       米(こめ)とともに、古来から日本の食生活を支えてきた魚介類だが、それを獲ることを生活の手段としている漁業者は、水産物の激減と安い輸入物の増加、後継者難の三重苦に喘いでいる。私達釣り人も、たかが遊びの釣りとはいえ、昔はよく釣れたのになどと嘆き節や遠い昔の自慢話を聞くだけになった。
      海は多くの生命を生み出し、育ての母であると同時に、人間や自然が持ち込む悪をすべて受け入れる最終処理場でもある。無限の広さと浄化能力を持つと信じられた海も、もう限界だ。この海を痛めつけているものは何か。いくつかの要因とそのことにより発生する現象が、海に生きる魚貝などすべての生物に、どの様な悪影響をもたらしているかを検証し、早急に対策をたてねばならない。
山奥から流れ出る水が流れ流れて海に注ぐ。この間にどのぐらい悪を我々は注いでいるのであろうか。
源流から渓へ、本流や湖へ、そして海へ。それぞれの場所で魚と遊び、自然を楽しむ我々釣り人も無関心ではいられないはずだ。
      子供達の将来に、すばらしい自然と、豊かな遊びとしての釣りの楽しみを残しておくことが求められている。
身近な所から、気がついたことから、些細な事から、行動を起こそうではありませんか。
周りの環境に常に関心を持ち、問題意識を持ち、個人でもよし、どこかのグループ・団体に参加・加入するもよしで、釣とは又一味違った楽しみになるかも知れない。

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            最近聞いたちょっといい話                                         04.6.25
                                                                             ( JOFI愛知・会員)田渕 稔

       私がよくお世話になっている知多師崎・仕立て船の船頭さんから、最近聞いた話。
先日、師崎漁協・釣り部会議で船頭さんたちが集まっている場で、漁協幹部から話があり、最近、漁協宛に「釣り客が折角まとめたゴミや撒き餌袋などを、帰り際に海に放り投げるのを見た・・・けしからん。との抗議が寄せられた」。「誰が何処で見ているか分からないので、皆さん注意しましょう」。という事であった由。
       この船頭さんは、「誰が見ているか分からないからではなく、我々、海で生活してゆくものにとって、大事な海を汚してはならない。一番海を守らなくてはならないのは我々ではないか。」と述べたと。
      私たち釣り人にも不心得者がいて、弁当ガラ・ペットボトル・ジュース缶・タバコ・釣り糸くず・ビニール袋など、なんでもかんでも投げ捨て、海をゴミ箱と思っている人たちが、残念ながらまだ少しいるのも事実。(少なくとも、インストラクターの資格を持っている釣り人には、そんな人はいないと信じるが)。
     環境問題、特に海の汚れを取り上げ、論じられる事が多くなった昨今、釣り人のゴミ捨て(海以外の場所も含めて)については、キャンペーンなどの効果もあってか、意識も向上し、マナーの向上が見られる感じがする。遊漁船の船長さんも、若い人が多いせいか、積極的に船内に大型ゴミ箱を設置したり、釣り客に指導・注意したりするようになっている。どちらかといえば古い体質の、仕立て船の船頭さんたちも、ようやく関心が出てきたのかな、良い傾向だなと、うれしく話を聞いた。
     私たちも、せめて釣り場や船着場に着いたら、釣りを始める前や、船に乗る前に、そこら辺に落ちているゴミを拾い集めるぐらいの事は、釣りの基本動作と心得たいと思う。
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                            釣りインストラクターの今後は?                04.5.19
                                                                    (JOFI愛知・会員)福井 信明

        5月14日に本年度の釣りインストラクター養成講習会・資格試験の案内を受領し、受験者数の確保などについてのアイディアを募集している旨の記事を見ましたので、その事に関して、私なりの意見を少し書いてみます。

**何故インストラクター制度が必要なのか?**
       自分自身がインストラクター・マスターでありながら、この問いに充分に答える事が出来ません。
私自身、いろいろな所でボランティア活動を行っており、どうせなら自分の最も得意な分野でのボランティアを、と思ったのが受検のきっかけでしたが、それから5年ほどが経過していますが、具体的に主旨に沿った活動が出来たのは、数えるほどしかありません。(報告書を殆んど提出していませんので、記録としては無いと思いますが)。
もっと言えば、資格取得以前と以後のこの分野での活動に、あまり変化がないように思われます。
釣りの指導・釣り場の清掃・その他においてです。もう少しJOFI愛知の活動に加わればこの“疑問”が変化してくるのかもしれませんが…
      一つの提案ですが、少し前より釣魚の“日本記録認定員”の案があったかと思います。釣魚の公式記録認定の資格者となるよう講習などを実施し、役割の一つに具体的に加えてはどうでしょうか。
釣り場での指導などは、内容的に難しい部分が多く、日本ではこれをボランテイィアのみで消化する事は困難だと思われます。釣り技術指導などはむしろ簡単な部分で、我が国で最も難しい部分は、マナー・モラルの欠如であり、これを我々だけで向上させようとしても、非常に困難だと思われます。インストラクターに何か特殊技能(例えば“釣魚検定資格”)などをもたせる事で他の釣り人と差別化を図り、釣り場においても優位性を持つことが可能になるのではないかと思います。
**受講料などの件**
   現在は、受講料+受験料+登録料という3段階に分かれていますが、受講料及び登録料を納入した上で、きちんと受講すればJOFIの準構成メンバーとし、1年間の活動参加を経て、受検⇒合格⇒正式メンバーとして登録する、としてはどうでしょうか?。
私もそうですが、インストラクター制度自身が未だ未だ未熟なところ、また言葉不足の部分もあると思われます。公認 釣りインストラクターの減少を防ぐ意味においても、このような制度変革を考えては如何でしょうか…
**資格について**
   マスター・インストラクター資格の中に、資格取得後 救急法(特に水上救急)や他に必要と思われる資格取得を義務付けては如何でしょうか?。私も松岡JOFI東海会長より指摘を受け、インストラクター資格をとった年に、一般救急法・船舶1級・ダイビングライセンスなどを取得し、更に豊橋市のボランティア組織に登録をいたしました。特に救急法については、その後会社の中でも有効に活用しており、簡単なアクシデントなら自信を持って処置に当たる事ができるようになり、他の人にも受講を勧めています。
**小学校・中学校対象の講習会を**
      公立小・中学校の週休2日制の導入により、週末の休日の過ごし方が問われています。
子供達は、ファミコンやゲーセンでのゲームの遊び方は良く知っていますが、自然の中での遊び方・ルールなどは知りません。ゲームの中でのフィッシングは知っていても、自然の中での本当の釣りは知りません。汐の干満・天候・水温・危険等の知識が少なく、自然の変化を確認する術を知りません。ゲームの中での釣りでは、いつも大漁・大物ばかり…そして電源を切れば、それですべて終わりでよいのです。
大人相手に講習会を開いても、効果は薄いと思います。子供達を中心に、今人気のルアーフィッシングを中心とした講習を繰り返し開催し、正しいマナー・モラルを含め指導する事が有効かと思います。バスフィッシングのお陰で、キャッチアンドリリースという一つの形が定着した事も事実です。何故そうするかでなく、かっこいいからそうすることが定着したのです。キャッチアンドイートの定着もかっこよく見せなければ定着しないと思います。
      付随して、子供達によるルアーの万引き行為なども増えていると聞いています。一部のマニアによる特定銘柄のルアーなどがもてはやされているからでしょう。子供達が1組何万円もするような釣具を持っている姿も信じられない光景です。釣具メーカーの宣伝の仕方にも問題あると思います。バスプロなどが、ロッドセットを何組も持ち、状況により選択しながら釣りをする場面をTV番組などでよく見かけますが、子供達への影響を考えると、改めて欲しいシーンです。この辺りにも、私たちインストラクターが役立てる部分があるかと思います。
      更に、我々の組織が脆弱であり、他の釣り団体(例えば日釣振等)との友好関係をさらに密にする必要性を、強く感じております。
 
                                [JOFI愛知  釣りインストラクター・フィッシングマスター] 福井 信明 (豊橋市)

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                               魚の病気のお話   

                                                JOFI愛知会員  長江 英夫       04.4.9
          <はじめに>
     皆様は、お魚の病気と言うと何を一番に連想されますか?。
沢山のコイが死亡し、出荷禁止になった霞ヶ浦のような病気ですか?。 
釣り上げたら奇形であったお魚でしょうか?。
 それとも寄生虫が寄生していて食べたらお腹が痛くなる病気でしょうか?。 
色々な病気を思い起こされると思いますが、ここでは、魚病の原因や東海地方の魚病調査の状況を簡単に紹介し、特に、釣り人や内水面漁協にとって、現在最も深刻な影響を及ぼしている冷水病の状況を紹介します。

          <魚病の原因>
    お魚にも色々な病気がありますが、ヒトに病気を起こす原因と理屈は同じです。
但し、お魚とヒトは、類人猿とヒトとの間柄の様に近縁ではありませんので、例えば、細菌やウイルス感染症の場合は、病気のお魚を食べてしまっても、一部例外はあるものの、感染しない事が多いのです。
       もっとも、死んだり、弱っている魚は、ヒトに悪影響がある腐敗菌が増殖している可能性がありますので、食べない方が賢明ですが。
     原因を分類しますと概ね下記のようになります。
(1)・遺伝学的原因
       致死因子、癌抑制遺伝子欠損、各疾患固有の遺伝子変異など、名前は色々です。
        自然界では淘汰されやすいので、釣り人に意識されることは少ないと言えます。
(2)・栄養障害
(3)・毒物暴露
(4)・感染症
       最近のように養殖が盛んになりますと、爆発的に病気の個体が増加しますので感染症の影響は深刻です。各水産試験場の魚病調査も主に感染症の実態を調べて報告しています。霞ヶ浦のコイヘルペス発生は、病魚の死亡率が高く、マスコミにも取り上げられましたので、皆さんの記憶に残っていると思います。
       原因となる微生物の種類により次のように更に細かく分類されます。 
(1)・細菌感染
(2)・カビ感染
(3)・ウイルス感染
(4)・原虫感染
  アユに深刻な影響を及ぼしている冷水病や細菌性出血性腹水病(シュードモナス病)、その他、エロモナス病などは(1)・の細菌感染症に該当します。
また、コイヘルペスは(3)・のウイルス感染です。
 なお、魚病というより食中毒として有名ですが、魚由来の菌によるヒトの病気に腸炎ビブリオがあります。この菌は、塩漬けにされても生き残り、食中毒を起こすのです。
(5)・寄生虫
 吸虫、線虫、蠕虫などが知られています。
香川県水産試験場事業報告書には、サワラ人工種苗0歳魚に血管内吸虫症が発症し、まとまった死亡が認められた事が報告されています。寄生虫の中には、寄生宿主である魚が死亡すると、時間の経過とともに、腸管からヒトが食べる身の方に移行するものがあり、その意味でも、古くなった魚の刺身は危険と言えます。古かったかどうかは定かでありませんが、森繁久弥氏がサバを食べ、寄生虫が胃壁に食い込み、入院して治療した事があります。このようにヒトの体内を移行する魚由来の寄生虫としては、アニサキスや顎口虫が知られています。

        <東海地区の魚病研究状況>
[1]・愛知県
       資 料 名 : 愛知県水産試験場業務報告
       発 行 年 : 2002
       主 標 題 : 内水面増養殖技術試験 (5)
                        冷水魚増養殖技術試験
                        ニジマスの冷水病感染試験
 (抄 録):
 冷水病は人工的に感染させるのが難しく,感染試験の結果が安定しない。
平均体重26.4gのニジマス稚魚を供試魚,Flavobacterium psyrophilus 99-cy-3株を冷水病菌株として冷水病の感染方法の条件を検討した。
接種菌液として原液(2.8×108CFU/ml),10倍,100倍,1000倍希釈液を作成し,1尾当たり0.05mlを筋肉内注射した。
飼育条件は注水量500ml/分,毎日少量の給餌を行い,飼育水温は14.2~16.3℃であった。
105~107CFU/fish接種区ではいずれの区も死亡魚が認められた。
それぞれの累積死亡率は25.0%,35.0%,95.0%で,接種濃度が高いほど死亡魚が早期に出現した。
死亡魚全部から冷水病菌が再分離され,感染率は25.0%,40.0%,100%であった。
半数致死量は1.06×106CFU/fishと推定した。

[2]・三重県
       資 料 名 : 三重県科学技術振興センター水産研究部事業報告 平成13年度
       発 行 年 : 2002
       主 標 題 : 水生生物の分布,生態調査 アユ冷水病実態調査
 (抄 録): 
 三重県内の河川に生息するアユにおける冷水病原因菌Flavobacterium psychrophilumの保菌状況を把握するため,県内の1河川においてアユを採捕し保菌検査を行なった。
また,河川内における冷水病原因菌の残留の有無を把握するため,河川にアユが生息しない2月に在来魚を採捕し,保菌検査を行った。
えら,または腎臓を検査部位とし,冷水病原因菌の検出にはPCR法を用いた。
その結果,いずれも冷水病原因菌は検出されなかった。
一方,アユ漁解禁中に多くのアユがへい死して淵にたまったり,瀕死のアユが川を流れ下るなど,冷水病の発生が疑われる現象も見られた。
県内の1漁協が放流する種苗のうち,湖産種苗2ロット,人工産種苗3ロット,海産種苗1ロット,河川への天然遡上アユ1ロットの計7ロットについて,放流直前に各60尾ずつ保菌検査した結果,琵琶湖産種苗2ロットで保菌魚を確認した。昨年度に出現した下顎部の歪みなどの奇形魚は見られなかった。

[3]・岐阜県 
       資 料 名 : 岐阜県淡水魚研究所研究報告
       発 行 年 : 2003
       主 標 題 :  魚病対策技術開発研究 アユの冷水病および細菌性出血性腹水病(シュードモナス病)の防除に関する研究
 (抄 録):
 湖産系と海産系の受精卵と湖産系の発眼卵の消毒処理の安全濃度と時間を調べ,両病原因菌に対する消毒処理の可能性を検討した。
その結果,冷水病と細菌性出血性腹水病の原因菌に対して,ポピドンヨード製剤および過酸化水素製剤が湖産系,海産系の受精卵,湖産系の発眼卵で消毒処理が可能と思われた。
湖産系と海産系の卵で消毒剤に対する安全濃度と時間に差があり海産系の方が強かったが,これは海産系の卵が湖産系に比べ卵重が約1.5倍と大きいためと思われた。

[3]・静岡県
       資料名: 静岡県水産試験場事業報告
       発行年: 2002
 (抄 録):
 静岡県内のアユ種苗の約7割を供給する静岡県アユ種苗センターで実施した冷水病対策について報告した。
PCR法により供試魚の腎臓から冷水病菌の遺伝子を検出した。
検出率は,親魚候補群の成熟前のアユは36.7%,成熟途中は36.7%,成熟親魚は35.0%であった。
成熟親魚の卵巣・精巣からの検出率は5%であった。
受精1日後,10日後の卵からは検出されなかった。
ふ化後7日目の仔魚では5検体中2検体から遺伝子が検出された。
ふ化後125日目の稚魚の腎臓からの検出率は3.3%であった。
ヨード剤による発眼卵消毒効果を検討した。
対照区では冷水病菌の遺伝子が検出されたが,処理区からは検出されなかった。

<釣り人にとっての冷水病>
        昨年の長良川郡上地区は冷水病の影響が深刻であった。
解禁日に大和地区に入った多くの釣り人は、半死に状態で川を流れていくアユや斃死して淵に横たわった多数のアユを見た。
また、背掛かりアユの1〜2割は側面に赤ただれた斑点が認められた。
冷水病である。
解禁後は不漁が続き、釣り人同士の会話は、昔のように「何匹釣れた?」ではなく、「釣れたか?」いや「未だ一匹もだ・・・坊主だ」と交わされる事が多かった。
                  この様な状況に至らしめた冷水病とはどんな病気か?
       汚染源は輸入した銀鮭と言われているが、今となっては定かにする事は不可能であるし、意味が無くなっている。
原因菌はFlavobacterium psychrophilumという細菌である。
低温でアユに病気を引き起こし、30℃以上では死滅してゆくようである。
では、と言う事で、アユの稚魚養殖を高温で行ったところ、冷水病は抑える事が出来たが、今度は、シュードモナス病が優位になり、養殖が失敗するという事態が起きた。
また、養殖池を完全消毒し、上手く養殖できたとしても、汚染された河川では、放流後に発病する状況があちこちで認められている。
免疫の無い個体では次々と感染してしまうようだ。
河川自体をきれいにするか、ワクチンで免疫を持たせた個体を放流するか、研究は進められているが、決定打は出ていない。
     長良川を蘇らせるため、関係漁協が会合し、解決策を模索し始めた。
その記事は、3月下旬の中日スポーツにも大きく掲載され、読者の記憶も新しいと思う。
その会合に参加した郡上漁協の白滝氏の話に拠れば、汚染稚魚を放流しなければ、河川自体は、徐々に清浄化する傾向が認められる。
昨年は冷水病を持たない稚魚と汚染魚とを同一の地区に混ぜて放流してしまったが、今年は、試みとして、地区を大きく分け、混ぜないように放流して見る予定との事であった。
河川が清浄化するかどうか、結果が出るまでには、まだ何年も掛かるかも知れないが、試みを続けて行きたいとも。
      なお、岐阜県産の人工養殖物は病気を持たないようであるが、必要量の6割ほどしか割り当てがなく、必要量を確保するためには、汚染の恐れのある湖産も海産も放流せざるを得ないようだ。
    今1つの解決策であるワクチンによる免疫賦活も、ワクチン自体は有効なものが出来上がっているが、注射法によらなければ、効果を確実に発現させる事が出来ないようである。
注射法は、何万匹、何10万匹という放流単位を対象にした時、コストが問題だ。
また、人が握るため、エロモナス病を発症する危険性があるようだ。完全自動化の注射システムを開発するか、浸漬法で効果が確実に出るワクチンの修飾法が必要だ。
   自然を汚したつけは大きい。
長良川河口堰を年中開放し、天然遡上による河川の浄化は図れないのであろうか?。
ワクチン開発の努力と共に、自然浄化の方策も検討すべきでなかろうか。

                     文責 :JOFI愛知会員 長江 英夫

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                         JOFIの活動理念について考える                 04.1.20

                                                                                 (JOFI愛知会員)田渕 稔

     釣りインストラクターの集まりである「JOFI愛知」が誕生して早くも8年目を迎えました。
この間、会員は結束して数々の行事を主催・協賛して、それなりにがんばってきました。
     然し、当初インストラクター制度が出来て、釣り人がこの資格を取得しようとした動機・思惑は、各個でそれぞれ異なっていたと思います。
描いていた事と現実の乖離が大きく、失望した人もいるであろうし、実際に、自分は何をしたらいいのか、はっきりしなくて、迷っている人もあるでしょう。
たしかに、この釣りインストラクター制度そのものの意味・位置付けや理念が,あいまいな所があるように思います。
     そのなかで今回さらに、広域釣りインストラクター組織として、「JOFI東海」が発足し、[全釣り協]の正会員としての資格も取得しました。
     申すまでもなく、[全釣り協]は釣り人の代表として,公的に認められている唯一の団体組織ですから、その一構成員としての「JOFI東海」も,[全釣り協]上部に対して、釣りに関するあらゆる問題について指摘し、意見を具申し、また、当地区の問題については、[全釣り協・本部]と協力して、行政・漁協・釣り業界・メディアなどに、釣り人代表の立場から、対等の立場に立って、折衝し、問題解決に努力する必要があります。今回、そのお墨付きを与えられたのです。
当然、そのため責任も出てくるでしょうし、成果も求められるでしょう。
     成果をあげるためには、相手との交渉ごとでは、やはり数(人数)が多くなくてはなりません。
私達が楽しく釣りを続け、子孫に繋げてゆくために、不利益を被るような問題については、正々堂々と闘わなくてはなりません。
そのためには、パワーが必要です。
     一人でも多くの釣り人が問題を共有し、集い、行動・発言する事が重要です。
各地で、ブラックバス・ブルーギル(蜜放流・リリース禁止・完全駆除・区分け管理など)や、撒き餌禁止条例撤廃、海釣り有料制の検討、禁漁区域指定の用などなどの問題があり、それぞれの地区で折衝が行われています。
このように、数え上げればきりがないほど、問題は身近にあります。
    他人事と思わないで、自分のこととして、是非皆さんもインストラクター資格を取得され、また、会員として一票を投じ、発言・行動されんことを願うものであります。
    もちろん、会(会員)としては、このような問題に対処するだけでなく、健全な釣りの発展を願ってのボランティア活動を行い、また、自己を律し研鑽するたの研修なども重要な行動項目であります。
ただ漫然と魚と遊び、忘我の世界に浸るのもいいものですが同じ、釣りの趣味を持つもの同士が集まり、理念を共有し・行動し、実現する喜びもまた、いいものだと思いませんか?

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                                      何か変だな?釣りエサ価格の不可解   

                                                 寄 稿 ;大田 豊明 (JOFI愛知 )   03.10.25

              釣りエサの価格は、まことに不明瞭である。我々釣り人もそれで当たり前と思っている節がある。
 しかし、考えてみれば、おかしな話ではないか。
       過日、新規オープンした釣りエサ専門店でのこと、巨キスの特効エサのチロりを買った。1パック千円のものを2パックである。
そこで聞いてみた。「チロリはキロいくらですか?」と。とたんに主人の顔が怪訝さから不機嫌さに変わった。(ように見えた)。大抵の場合こうである。聞いてはいけない事を聞いたような気まずさを覚える。
       主人の口をついて出たのは、釣りエサの管理の難しさや利幅のなさ、などの愚痴やいいわけで、肝心のキロ単価は教えてもらえなかった。どこの店も大体似たような反応ではないだろうか。なぜだろう?。
我々が日常買い求める生活用品で単価の不明瞭なものは、まず見当たらない。ガソリン・酒などは容量がベースで、米や肉・魚はおおむね重量単価である。まれに1パックいくらという商品もあるが、数は少ない。
        ところで、投げ釣りのエサでお目にかかる、岩虫やチロリ・イシゴカイなどは、なぜ5百円・千円のパック売りなのだろうキロいくらで表示し、重量単位で売ればいいのではなかろうか。今のままでは、どこのお店が良心的なのか、高いのか安いのか、サッパリ分からないようにしてあるからだろう。釣り人のエサ店の選択肢は、自宅や釣り場に近いという利便性と新鮮さに求めるしかない。本当にそれでいいのだろうか。
       筆者は、投げ竿を片手に全国を釣り歩くが、多くの釣りエサ店はパック販売方式である。 しかし、キロいくらと表示販売しているお店もある。概して、西日本に多い。
       釣りエサはとても高価な買い物である。マダイがキロ数千円なのに、岩虫はキロ2万円近い。釣り人には酷な話だが、魚は買って食べたほうが遥かに安い。あの店がキロ1万8千円で、この店が1万7千円となれば、客の好みで釣りエサ店を選べる。これが本当の商取引ではなかろうか。
       闇のベールをかぶっているように思えてならない釣りエサ業界に、釣り人として、明朗性を期待して止まない
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                                      釣り界の現況とわれら

                                                    寄 稿 ;大田 豊明 (JOFI愛知 )    ‘03.8.5

              私は、広域投げ釣り団体・全日本サーフキャスティング連盟に所属し、広島協会えのみやサーフ代表。この他に、会社の釣りクラブのお世話や、JOFI事務局などを合わせると、つりの関係で、3足のワラジをはいている。
              昭和40年代から50年代にかけ、膨大な会員数を誇った全日本サーフも、会員減少に歯止めがかからず、今や全盛期の半数、4千名にまで落ち込んだ。その理由は、レジャーの多様化、個人主義の台頭、交通手段の発達、釣り場や釣魚数の減少など、 いろいろと言われている。今、(社)全釣り協やインストラクター組織も、おなじような現象にならないかと危惧している。
         そこで、原点に帰り、20数年前に、なぜ全日本サーフに入会したか?と自問自答してみた。答えはひとつ [あこがれ] である。実釣とキャスティングに優れたプロ集団であり、且つ、活動や考え方が先進的でアカデミックな、まさに釣り界のリーダーたる資質と行動力をそれぞれが持っていた。その集団も、私には、今や衰退の坂を転がりつつあるように見える。
         私見ながら、その原因のひとつを、現状や世の流れに迎合した為ではなかろうかと見る。組織には、各種の規約があるが、それは厳しすぎるくらいのほうがいい。全サーフの例を挙げよう。マイカーでのシートベルト着用は立法以前から実施していた。釣り場では焚き火厳禁。大会での受付や審査時間も実に厳しく、ルール・マナーやつりに対する姿勢への内部規制がいくつもあった。{ガツガツした釣りをせず、楽しさを釣れ!}とも教えられた。外部に対しては、水辺の清掃ボランティアや、市民への投げつり教室、自然保護に関する活動、公害魚収集運動、関係諸官庁や漁業関係者などとの公式の場に、釣り人の代表を送り込む、等々。
         その巨大組織も、会員の減少傾向とともに、だんだんとタガを緩めてきた。役員も、安定にアグラをかき、厳しく自らを律せず、フロンティア精神も理想も,どこかへ置き忘れたかのよう。一度甘くなった規制は元に戻らず、単に釣り好きの集まりへと変身(堕落)してしまった。・・・と言ったら言い過ぎだろうか?。すべからく、組織は、高い理想と規範を持続すべきであろう。なにごとも、安きに流れたり、低きに合わせては没落する。
         では、我々の「釣りインストラクター組織」に目を転じてみよう。今までの有資格者は全国2千名を超えているが、各支部に在籍し、志高く持続して活動しているインストラクターが減っていないか。当、「JOFI愛知」も、設立以来90名前後の会員数で推移したが、最近減少傾向を示している。理想と現実(期待と思惑)のズレや、初心を忘れつつあるのが、その要因ではなかろうか。
         しかし、「JOFI愛知」は、市井(しせい)の釣りクラブや、単なる釣り好きの集団ではない。国に認められた唯一の釣り団体なのである。「JOFI」のメリットなにですか?とよく聞かれるが、私は{メリットはない、 あるとすれば、それはあなたの心の中にだけ存在する}と答える。
         そこで、皆さんに提案したい。まず、我々「JOFI」のメンバーは、全員が {公認団体の一員であることの誇り} を忘れてはなるまい。釣り場では、他の釣り人のリーダーたる自覚と誇りを持った行動をしているだろうか。次に、他の釣り人から、憧れをもって見られる団体であって欲しい。釣り人の代表として、いろいろな公的活動を展開し、釣技も抜きん出る存在でありたい。
         最後に、我々は人格・品位に優れた釣り人でありたい。とかく、世に出るためには品位(品性)がおろそかになりがちだが、金森先生(JOFI愛知顧問)も説かれている[釣り心]を大事にする人でありたい。我々の目標は、[JOFI]のスローガン・・・「釣りを通じて社会貢献」・・・を、実践できる人物になることではなかろうか。

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                        全釣り協って何だろう

                                                              寄  稿 ; 大田 豊明 (JOFI愛知・代表)

      ご存知だろうか。我々JOFI愛知は、平成9年2月に誕生した。つまり、全国の釣りインストラクター組織に先駆けて足した団体である。その後、各地で組織化が図られ、いまや22の団体に発展してきた。その間、広島・埼玉・静岡各県の釣りインストラクター組織を訪問して、裏方のお話などをさせていただいた。
   あれから5年、いまは懐かしい。
   そこで、最近思っていることを記してみたい。

       釣り人の立場を守り、釣りの秩序つくりを、との目的からスタートしたのが全釣り協。釣り人の窓口として国が認知した唯 一の団体である。組織は各都道府県釣り協と広域釣り団体から成っている。 しかし、分かっているようでわかっていないのではないか。私の記憶にある小西和人氏や鴨谷計幸氏らの言葉から、全釣り協の歴史とインストラクター組織についてお話しよう。
       わが国には、漁業者が先住民族然として君臨しており、釣りフアンの増加と共に両者の間に資源の争奪が始まり、釣り人を海・川から締め出す動きや、釣りの有料化などの論議が、漁業者から持ち上がってきた。これが昭和44年のことである。この動きに、人数では勝っていても、所詮烏合の衆にすぎない釣り人では、対等にものが言える土俵すらなかった。
       そこで、昭和44年8月、釣り人の大同団結をとつくられたのが、東京と大阪二つの釣り組織、東日本釣り団体協議会と西日本釣り団体協議会である。
       この二つの組織は、2年後の昭和46年に一本化し、同時に国にも認められ、昭和46年4月「社団法人全日本釣り団体協議会」としてスタートした。
          当時の主目的は次の二つだったと聞く。
     (イ)全漁連や行政などと対等に話し合いが出来る組織。
     (ロ)釣りのモラル、ルールなど釣り人に秩序維持の呼びかけが出来る組織。
       それから30年余、釣り人のリーダー役として、どう活躍し、どう変わって来たのだろうか。
一方、釣りインストラクターの構想は、昭和59年に広島県においてそのはしりがみられ、県の認知を得て「遊漁指導員制度」としてスタートした経緯があるが、その後、正式に発足したのは平成4年当団体の創立20周年事業のひとつとしてである。
          我々は、今一度それぞれの創業の精神とリーダー達の夢に思いを馳せながら、いま我々のやるべきことを考えてみようではありませんか。
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